昭和の風林史(昭和四九年十二月二六日掲載分)
なんとの静かな越年になりそうだ。
新年に大きな期待がかけられているが
行動力が発揮されない。
「桑枯れてなりはひもなき町の音 秋桜子」
いろいろな年があった今年も、きょう、あすで相場は終わる。
商いが極度に細っているのが心淋しいが、
ともかく終わるのだ―という安堵感がある。
大発会は一月六日。四日が第一土曜の休会だから間のびする。
証券市場は四日が初立会いで、銀行も官庁も四日から始まる。
相場は立たぬが四日仕事始めにする取引員もあるようだ。
六日じゃ締まらない。一年の計は元旦にあり。
計算してみると一月は31日のうち
第一、第三土曜日の休日を含め10日も休日だ。
正味働く日数が少ない上に相場が閑だと、これは困る。
生活の知恵とでもいうのか、経営の知恵かもしれないが、
当限の納会が終わった次の日に
新限月を発会させたいという案は、一歩進んだ考え方である。
そうなると二日新ポだとか三日新ポなどという言葉が消える。
穀物市場でも、現在60㌔一俵の値段が建て値になっているが、
これを一㌔の値段を建て値にしようという動きがある。
キロ建てならいまの値段を60で割ればよい。
仮りに一俵二万円の相場なら三百三十四円である。
ポケットに入るような計算機が
当分のあいだ必要になるかもしれない。
ケイ線を引くにも、いちいち60㌔に換算しなおす必要がある。
人は、いろいろな事を考えながら進歩していく。
穀取業界も少しずつ進歩していかなければならない。
閑だ、閑だと天を仰いで嘆息していたのでは、
なにも片づかない。
市場は残り少ない立ち会い日数を
気にしながら気迷いを深めている。
来年は、大きな相場が期待出来るとしながらも、
一月、二月の不需要期に荷圧迫で
一段安があるのではないかという不安もある。
手亡もピービーンズの通関で、
一段安懸念がぬぐえないようだ。
一方、大発会に登場する小豆の六月限は、
かなりのサヤを買って生まれよう。
それに刺激されて長期限月も活動するだろう。
年内に買い玉を建てて新年を楽しみにするという動きも見られる。
ともあれ、静かな越年である。
●編集部註
カシオが世界初の「ポケットに入るような計算機」を
一万二八〇〇円で販売したのが昭和四七年。
十カ月で百万台売れた。
これを機に「電卓戦争」が始まり、各メーカーがしのぎを削る。
昭和五一年の四月になると
この計算機は三九〇〇円まで値下げされる。
【昭和四九年十二月二五日小豆五月限
大阪一万六四六〇円・七〇円高/
東京一万六四三〇円・九〇円高】