昭和の風林史 (昭和四九年八月一日掲載分)
駆け足で秋は訪れる。その八月戦開幕。
甲子園は燃えるが産地は冷えて
冷えた産地が相場を燃やす。
「八月を風に淡路の船かがり 子規」
先物市場の仕手戦は相場に咲く花である。
酒は微燻を重んじ、花は半開をよしとする。
相場に咲く花は七分を逃げ場とする。
しかしたいがいは十二分まで行きすぎて
咲いた花が散る。
落花枝に返らず覆水また盆に戻らず。
小豆相場は仕手戦の傾向を強めそうだ。
仕手戦は感情的になっては敗けであるが、
感情的でなければ面白さが半減する。
やっちまえ。
関西では、「いてまえ」と言う。
「いってまえ」とは言わない。
「いてまえ」でいいのだ。
相場師は直情径行である。
気も短い。淡白である。
それでいて辛抱も強い。
穀物市場の相場師は、
他商品の相場師と、
ちょっと違うところがある。
やはり北海道のお天気で
その日その日が高かったり
崩れたりするからであろう。
二万円指呼の間に買われた小豆が
崩壊して、これが八月相場の新ポ、
後半戦の踏み出しである。
まだまだ作柄に油断は出来ない。
霖雨といって秋の長雨が心配されるし、
駆け足で来る秋の冷え込みが心配である。
八月の乱戦は
「直った、直らない」の作柄の見方と、
最も重要な八月十日前後から二十日までの
天候であろう。
小豆の線型が天井していない事から見ても
新穀二万円時代の修羅場は
中旬から下旬にかけて展開されそうに思う。
これから、強気は強気、弱気は弱気で
旗幟はいよいよ鮮明になるだろう。
信念だよ。おおそうとも。
手亡の12月限が
三千二百九十円幅を騰げたあいだに
小豆の12月限は
千三百七十円しか騰げなかった。
この事情を簡単に言えば
在庫量の違い、最終収穫高の違い。
供用品の海外市況。
投機人気の違いであろう。
本来、手亡より小豆に人気があるものだが、
証拠金の関係や値段の動きなどから
小豆と手亡とが
クロスするようなところまで行った。
八月相場は手亡から小豆に
投機の火が移るのではなかろうか。
見渡すと高値警戒人気である。
かなり弱気がふえている。
無条件強気が少ない。
この現象が
八月相場にどう反映するか楽しみだ。
小豆の八月戦に
大なる期待を持つものである。
●編集部注
絶叫型のジェットコースターは、
緩やかに傾いてから、
徐々に下げを加速させ、
奈落の底に落ちた途端に急上昇する。
胃液が逆流するほどの変転が
数度繰り返される。
相場は途中で逃げる事が出来る。
それだけが絶叫マシンとの違いである。
【昭和四九年七月三一日小豆十二月限大阪一万八九三〇円・八〇円安/東京一万八九五〇円・七〇円安】