昭和の風林史 (昭和四九年六月十七日掲載分)
結局のところ逆張りの域を出ない。
突っ込み買いの噴き値売り。
大きい動きは期待しにくい。
「うす茜ワインゼリーは溶くるがに 草城」
大阪穀取も小豆の証拠金を七万円にした。
東穀のほうがひと足早かった。
東穀のうしろからついて行けば無難だ
という考えがあるとは思えないが、
大穀のようなローカル取引所は、
中央の情勢に暗いし、政治力も弱いから、
東穀の真似をしておけば安全であろう。
大穀の中井理事長の評判は、とみによろしい。
中井幸太郎氏の人徳である。
中井さんは、私財を撒くから評判がよいのだ
―という人もあるが、
私財があっても撒かない人もあるし、
撒いても人徳のない人は敵を多くつくることになる。
要は、泥くさいけれど、
中井さんには哲学がある―
ということではなかろうか。
前の西田三郎氏も名理事長であったが、
中井氏も名理事長である。
ただ残念な事に、
どのような名理事長が君臨しても
大穀には人材がない。
器量のある人材を登用、養成するのも
理事長の責務に違いないが、
養成しようにも素質がなければ登用出来ず、
素質はあれど頭つかえの老害と
ヘドロ一杯の組織では、これまたなんともならない。
取引所は会員組織ということから考えてみれば、
大穀の消極性にしろ、老害にしろ、
あるいは無気力にしても、
これすべて会員の意思によるもので、
取引所に人材なしということは、
会員に人材なきことを暴露露呈せることである。
さて、小豆相場は強気すべきか、
弱きすべきか判断に迷う人が多い。
仕掛けに迷うのであれば
動いた値段で両建て、
両建てにすれば判りやすい。
なあに、一万八千円と一万七千円のあいだの
高下である。
売り玉も、買い玉も充分利になる。
一万六千五百円の一万七千五百円
という見方でもかまわない。
高いなと思う値は売り建てにする。
安いなと思う値は買い建てにする。
肩を張る必要はない。
ズンズン高ければズンズン売り上がっていく。
売り上がっても限界が見えている。
安ければその逆でよい。
見ていると
誰も彼も決め手になる方針を持っていない。
気迷いといえば気迷いである。
天候不安対荷圧迫。
理想的な動きなら、
まず一万六千五百円あたりまで
押す事ではなかろうか。
下げなければ上がらない。
●編集部註
行間から、
当時の相場の面白くなさが伝わる。
ところがどっこい、
実勢相場は俄然ここから面白くなる。
今昔を問わず相場に勝つ人は頭が柔軟だ。
それが試されるのがこれからの相場である。
【昭和四九年六月一四日小豆十一月限大阪一万七二二〇円・五〇円高/東京一万七二三〇円・七〇円高】