証券ビュー

森羅万象

相場零落して 凄惨また涙あり (2016.06.10)

昭和の風林史 (昭和四九年六月七日掲載分)
その時、相場は決然と下がる。
先限一万六千円割れもあろう。
付いた値が相場ということ。
「のぼりゆく草細りゆく天道虫 草田男」
早くから強気していたクロウト筋が、
高値掴みの買い玉可愛いで、
未練のテープが切れず、
低温頼みにズルズルと強気してきた。

一方、大衆筋は弱気が多く、
この相場、売られているから下げにくい
―という見方がなされていた。

しかし、天候のほうは、〝発芽期の降霜なし〟
という予想が支配しだし、
加えて五月末の需給数字を、
あらためて見直したわけである。

品物は売れない。在庫はふえる。
完全に供給過剰の小豆である。
これじゃ、買えん。強気する火の種がない。
相場の世界は「需給に勝る材料なし」だ。
仕手相場、天候相場においても、
最終的には需給がものを言う。
まして金融が詰まったままの経済社会で、
投機思惑をこころみる仮需要は湧かない。
人気は冷めているのだ。

物理的な面では、
窮屈だった東京都内の各倉庫は
繊維雑貨類が移動して、かなり楽になった。
倉庫会社から『スペースが空きましたから、どうぞ』
と言われるようでは、
産地からの移出も積極化してこよう。

それは、第一段階における天候の心配が薄れたことと、
先安懸念による売り急ぎ。
この二つの心理的変化によるものである。

そこで下値を予想すれば、当面十月限の一万六千円。
九月限の六千円割れ。新穀十一月限の七千円割れ。
あと発芽順調→成育順調→天候不安なしとくれば、
この時相場は総崩れしてくる。
積年の疲労一挙に現われ先限一万五千円も、
付いた値が相場となる。

期待して悪いことはないが、
過ぎたる期待が逆の効果を呼ぶ結果になったわけだ。
だがこれも、悲観のしすぎは、
いずれ反動を呼ぶことであろうが、
それはもっと先の事。

いずれにしても線型は悪いし、
人気は冷めきっているし、供給は過剰。
まして天候が、そっぽをむいては、
なんで相場、上がろうか。
相場相場なぜ下がる。
あんまりお天気よいので下がる。
下がれ下がれズンズン下がれ。

●編集部注
この時代、世界はまだ色々と鬱屈している。
この週、泥酔した観客達が大勢で球場に乱入。
試合を妨害して没収試合になる。
甲子園の話ではない。大リーグでの話だ。

【昭和四九年六月六日小豆十一月限大阪一万七五九〇円・一〇〇円安/東京一万七五〇〇円・六〇円安】