昭和の風林史 (昭和四九年五月二九日掲載分)
六月はいよいよ天災期の第一関門。
無事通過なるかどうかの正念場。
相場も静寂を破る波乱期へ。
小豆の納会は予想通りと予想通り。
渡し切りで灰汁抜け―といえば、
あるいはそうかもしれない。
まあ、しかし先の限月を売っている筋が
受けの主力であるから
「サヤ取り」が主のまず平穏な幕切れの部類か。
規制緩和の大手亡は東京市場が急騰した。
もっとも渡し物自体が少なかったところへ、
売り大手の一角が手じまったのだから高納会は当然。
新穀を渡すほどの妙味もなく、
マバラの受け腰が意外にしっかりしていたため
人気の裏目が出たのだろう。
さて、小豆相場であるが、
このままでは干上がってしまう―
と各取引員の眼の色も変わってきつつある。
幸いといっては何だか、小豆は播種もほぼ完了し、
「気温と発芽」の関係が取り沙汰される本番入りだ。
十二~十三度の適温で二週間後に芽を出す。
十勝の播種最盛期が二四、五日ごろとすると
順調にいって六月十日からか。
気温の推移は?
〝霜別れ〟の札幌祭(6月15日)までの
朝方の冷え込みぐあいは?
仮に発芽が遅れた場合、
相場にどの程度の影響があるのか?
いずれにしろ出発点の明暗は、
今年の作柄判断の重要なメドとなる。
もう一つ見逃せないのが作付け面積だ。
この方は六月中旬に道農務部が予想発表するが、
前年比で五千ヘクタールも違えば、
人気にも相当響こう。
あれやこれや、六月は天災期の第一関門、
身動きのつかないもちあい相場に
お別れする糸口はつかめそうだ。
さしあたって新ポの生まれが注目点。
ザラ場で新穀の産地の売り声は
一万八千四、五百円どころ。
まず千円の上ザヤは帰ると見ておいてよいのであろう。
この新ポの生まれ値は
市場の人気を探るのに大いに役立つ。
今のところ順当な発会で一千百円ザヤ。
これ以下なら警戒が強い証拠だし、
大上ザヤなら天候期待の買い気が強い―ということになる。
願わくば実質逆ザヤ生まれで、
人気を冷やし売り込ませた方があとあとに妙味が増す。
はたしてどういうことになるか…。
●編集部注
貴金属取引が日々の取引の中心になっている現在、
鞘が拡大縮小する事はあれど、
オカメだとか天狗だとか
そういった鞘を見かける事は稀である。
古今東西を問わず、
穀物相場は鞘に泣き、鞘に励まされる事がある。
その瞬間が近づいている。
【昭和四九年五月二八日小豆十月限大阪一万七二九〇円・二〇円高/東京一万七二九〇円・七〇円高】