記録的な一歩 スズケン 5月31日 (2016.05.30)
前期最高トップ交代
物流強化でトップ返り咲き目指す
スズケン(9987)は復活。記録的な一歩を踏み出した。2月、トップ交代4月就任を発表。前期連結8年振り営業・経常利益ピーク更新。4月に名南物流センタ―稼働など中期成長戦略によるもの。BCP体制が全国レベルで本格化している。「One Suzuken 2016」3年目。前回述べた2025年を目安に卸、製造、保険薬局、医療関連サービスなどすべての分野でオンリーワンビジネスを確立するのが狙い。BCPの取り組みが問題解決の核心になった。11年3月の東日本大震災以後策定運用指針が明らかになり、緊急事態に備えた事業継続計画を目指すもの。92億円投入し400人が従事する最大規模の名南物流センター(名古屋南ジャンクション隣)が一例。海抜20m、震度7を想定した耐震構造、受注から出荷まで20分(3分の1)など緊急時の安定供給が決め手。今後、メーカー機能を強化した筑波物流センター、日本初メーカー・卸・ターミナル一体型の六甲物流センターなど東西でも稼働する見込み。地域の医療機関や薬局、小口の在宅医療さえ対応できる。1990年代医薬分業を受けて調剤薬局が急増。薬価改定とともに卸再編に巻き込まれトップから業界3位に後退。反転攻勢に入ったばかり。前期、連結売上高が初の2兆円大台を突破した。営業、経常、純利益そろって最高になったのも呼び水。07年就任以来、薬価改定、ジェネリック使用促進、消費増税、さらに単品単価取引移行を乗り越えた前社長の花道。ギリアド社のC型肝炎治療薬2剤の取り扱いが同社と東邦HD(8129)に決まり、小野薬品との良好な関係から抗悪性腫瘍剤や生活習慣病関連薬剤など市場拡大をもたらした。事実、前期の連結売上高2兆2283億3100万円(13.1%増)に対し営業利益282億4400万円(08年3月期233億円)、経常利益457億2700万円(同372億円)、純利益289億6000万円(同213億円)とべらぼうな好決算。今期ギリアド社のC型肝炎治療剤500億円(前期1700億円)を前提に減収減益予想だが、東邦HDが比較的強気で上方修正を期待できる。4月に副社長から昇格した宮田社長(56)のリーダーシップによるもの。トップが11年若返りBCP実現に一丸。機動的でスピーディな対応に弾みがつきそうだ。何より中期成長戦略立案の責任者。BCP対応次第で業界トップ返り咲き。前期大幅に上振れし今期締まると本物だ。4月に起きた熊本地震。連結子会社の三和化学が操業停止。グループの翔薬(本社福岡市)も影響を受けたが、人の被害、医薬品供給に支障なし。東日本大震災の経験が生きたという。
2017年3月期(連結)は、売上高2兆1050億円、営業利益199億円、経常利益290億円、純利益185億円と慎重な見通し。16年度薬価改定(5.57%)時にリベート体系等を見直し、仕入れ割引の金利が市場と乖離したほかジェネリック普及など収益構造の変化によるもの。記念15円を落とし54円配当(中間27円)に戻す予定。設備投資221億円(前期74億円)の計画。医療用医薬品の市場0.8%減(前期8.3%増)と厳しく見ている。このほか製造、保険薬局、医療関連サービス等堅調。08年立ち上げた中国の事業も順調という。前期末推定全国シェア21.9%。1%上がった。今年から3年調整運。宮田社長も同運で仕込みに尽きる。物流強化でトップ返り咲きを目指す構えだ。2004年、英国は民間緊急事態法を制定し、事業継続経験を促す積極的な法的義務を課した。BCPの動きが活発になっている。