昭和の風林史(昭和四九年五月八日掲載分)
九月限の六千七百円あたりの値が欲しい。
千円棒が入ったあたりから本格的買い時代になろう。
「一抹に長き雲の朱夏芭蕉 青畝」
期待は大きいけれど、相場の動きは小さい。
三千円圏内での千円幅以内の動きが続いている小豆だ。
いずれ先に行けば…という待ち遠しさは誰にでもある。
低温、降霜、旱害―
なにか現実面の現象があって、相場を刺激するだろう―と。
だが、今の値段は、買って買えぬ事はないが、
すぐ頭がつかえそうで、
出来得れば七千円以下をゆっくり買いたい。
強気している人たちは一様に
〝大きく下げてくれないか〟と、押し目待ちである。
思えば昭和九年室戸台風で米相場暴騰。
昭和十九年戦争末期、二合三勺配給時代。
昭和二十九年山種対吉川の仕手相場。
昭和三十九年冷害・凶作大相場。
そして昭和四十九年異常気象。
不思議に明治元年以来、九のつく年に不作が多い。
その事は前にも書いた。神秘的でさえある。
人々は、今年の小豆相場は
二万円時代の幕開けだと信じている。
だが、それは、単に人気と熱気だけでは
〝虚〟でしかない。
二万円時代は〝実〟でなければならない。
作付け予想→播種→遅れ→発芽→
低温→降霜→被害→相場沸騰のコース。
当面、農作業が天候にわざわいされて
例年より遅れるという材料と、
作付け動向が最大の相場刺激要素である。
市場要因としては、ホクレンの売りつなぎ。
有力取引員の建て玉と売買手口。
現物の移動と消費状況。
鳴りをひとめている仕手筋の動向など、
たえず注意されて見守られている。
そして内部要因は減少した取り組み。
四連休による営業の中だるみ。
八千円抜けを政治的に抑えられるのではないか
という配慮などで、いまひとつ商い面は低調である。
そうこうしているあいだにも時間は経過し、
ひとつひとつの材料が現実のものとなる。
まだしばらくは押し目待ちの動きであろう。
大きな相場に発展するには
大きな取り組み(エネルギー)を必要とする。
依然売り込み不足という声を聞く小豆相場だが
嫌でも売ってしまうという場面が
あるのではなかろうか。
そういうところを買いたい。
●編集部註
〝そういうところ〟は、間もなくやって来る。
四月末に発生したマドが一つの節目であった。
黄金週間明けのリハビリも
一段落した五月十三日に相場は大陰線が出現。
ここで買い号令が出るか。
【昭和四九年五月七日小豆十月限大阪一万七四七〇円・三〇円安/東京一万七三五〇円・六〇円安】