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森羅万象

ふーりん東南アジアを飛ぶ(鏑木発信) (2016.03.29)

昭和の風林史(昭和四九年三月二十二日掲載分)
●帰国して 
帰国してみると、
向こうでせっせと書いて送った原稿が
掲載されつつある。

もう少し早く到着しているかと思ったが、
エア・メールは時間がかかっていた。

掲載されたものを読み返してみると
随分杜撰である。

この稿は一応これで区切って、
持ち帰った資料とメモとフィルムを整理して、
時間を置いてから纒まったものを書こうと思う。

★得たものは大きかった
筆者が今度の旅行で得たものは大きかった。
そして感じた事は香港もバンコックも、
クアラでも、ジャカルタ、シンガポールでも
各国とも日本企業の進出に
強い警戒心を持っている事である。
われわれが天然ゴム・ミッションだったせいか
マレーシアでもシンガポールでもジャカルダでも
日本の合成ゴム産業の存在に
強い関心と警戒を持っている事だった。

★駐在員の苦労は大変
また各地でお会いした現地駐在の商社の方々が
三百六十五日休日なしの体力的にも限界状態で勤務し、
しかもその努力が日本ではほとんど理解されず、
また現地事情がまったく日本内地に理解されておらず、
どれだけ無念の気持ちで仕事を続けているか、
通りすがりのわれわれのような旅行者にも
そのことが判るような気がした。
もうひとつは、どこへ行っても
その日、その日の金の価格とドルの相場の変動を
商人であれ、食堂のボーイであれ、
タクシーの運転手、売店の売り子でさえ、
茶飯事の如く日常の生活に密着している事である。
われわれの訪問した各国は、
いずれも経済を華人が絶対的に支配し、
あらためて
東南アジア各国の華人の力を見る思いがした。

★華人を警戒するマ政府
そしてマレーシア政府はゴムの産業に、
きわめて力を注ぎ、
極力、華人らの投機的思惑が介入することを
避けようとしている。
物価については、どこの国でも
二割五分ないし三割上昇したという。
われわれはもの事を片面からだけ見て
即断する事がいかに危険であるかを知った。

★さわやか!一行22名
いま、この稿を締めくくるに当たって、
われわれ22名のチームがいかにすがすがしく、
気持ちのよいチームであったかを書きたい。
団長多々良氏、
副団長鈴木専一氏、東ゴム理事内田良一氏、
アサヒトラベル社長郡司亮一氏のチーム首脳者の
献身的で熱心な行動と
三福工業三井徳次郎、富国ゴム倉田享、
大進ゴム西村実、泰星交易佐藤史生各氏および
日本ゼオンの中野、山崎両氏らの
各地における現地法人、
あるいは駐在商社員の方々との連絡。
それらの人々の真面目な態度。
また常にチームに明るい話題を提供し
笑いのウズをつくる山栄の川島、竹山。
岡地の前田、野村。誠和の小林各氏。
旅なれた経験を控え目にアドバイスする富士の栗本義明氏。
そしていつも元気で、やや冒険的な、
なんでも見てやろうの意欲のある西王の木村秀規、
協栄の高橋恒男の両氏。
良識と堅実の豊の辻川政一、富士高橋伸幸、
長老的存在の興和の田代全三郎の各氏。

★一度のトラブルもなく
旅行中、一度のトラブルもなく
誰一人病気にもならず、
スケジュールが順調に消化され、
まったく深いな思いをせずに和気あいあい
協力しあって各人それぞれ大きな収穫を得たことは、
チームの全員が他人に迷惑をかけてはいけないと
心がけていたからであろう。
今思うと、その場面場面が鮮やかに蘇ってくる。
そして一人一人が懐しい。

★この体験を仕事の上に
われわれは自信を持ってそれぞれの仕事に復帰した。
そして旅で見聞し、体で得た豊富な経験が
今後の仕事の上にどれだけプラスになるであろうか
充分に期待している。
皆様に筆者は感謝するものである。(この稿終わり)