ペナン8日発ふーりん東南アジアを飛ぶ (2016.03.22)
昭和の風林史(昭和四九年三月十四日掲載分)
鏑木発信
★誰も彼も言葉がヘン
ゴム・ミッションの一行に同行して、
香港→バンコック→ハジャイ→ペナンとだんだん南下。
明日は早朝マレーシアの首都クアラルンプールに入る。
纒まった原稿を送る予定が
連日32度~34度の暑さとスケジュールに追われ、
頭の中はとりとめもない。
ただメモ、メモで追われ、
カメラの中の収穫も豊富。
面白いことに誰も彼もが言葉つきが変になっている。
日本の文法が崩れ、片言の英語や中国語などがまじって、
それでどこへ行っても通じる。
食事に関しては心配していたよりも口に合うので
みな太り気味。
誰もが陽気に食べ、
なんのトラブルもなくスケジュールを消化し、
通貨の換算もようやくなれて、南十字星を眺め、
赤道を越えてさらにな南下するこれからの旅程に
強い自信を持っている。
★ゴムの樹も痛かろう
今朝タイ国立ゴム研究所で
ゴムの樹からポタポタと白い液が流れ出るところを見て
感心することしきり。
同研究所のフランス人所長は大変ユーモアのある方で、
スモール・ホルダゴムの小農園は、
ゴムの相場が高いとゴムの樹がどのように痛もうと
一日に二回も採取するからゴムの樹はかわいそうだという。
★RASSの選別風景
昨日はハジャイの強烈で異様な臭いのする工場を見学。
女子労働者は小学校二、三年ぐらいの年頃から
二十二、三才ぐらいの年齢で、これらの人々がおよそ八十名。
広いところでハサミを持ってRASSの選別に余念がない。
ハサミの音と異様な臭いと暑さで大変な作業だと思った。
この工場の名前もその時の説明も皆メモし、
録音テープに入れてあるが、
未整理(ゴム研究所所長の説明もテープに保存)。
皆が協力して
写真、録音、通訳、解説等を受け持っているため、
帰国後これら資料が統合整理されたらかなりのものとなろう。
★頭はガンガンし通し
ところで小豆相場のほうはどうなっているのだろうか。
不思議なことに、日本の国の事も相場の事も、
まして会社のことも家族のことも、
まったく頭の中にないのはなぜだろうかと思った。
それは追われているスケジュールと
暑さと通貨換算率や見聞することがあまりにも多すぎるため、
頭の中が一杯になり、
そういうこと以外考える余地がないからであろうか。
★帰るのが嫌になる!?
バンコックに行けばここに住みたくなり、
ハジャイに行けばなんと物価が安いのに驚き、
遠浅のソンゴラに行けばその地に永住したくなる。
ましてペナンに来て、ペナンヒルからマレー半島を望めば
もう日本に帰るのが本当に嫌になるような
非常に危険な状態になるのは小生一人だけだろうか。
日本のようにあくせくせず、
まったくのんびりとした風景、
どこへ行っても本ものの味のする美味で
非常に安い食物、
南下するに従って人々の純な気持ち。
日本には、もうないものばかりが
ここにあるように思う。
★だが物騒で、不衛生
しかし半面、水道の蛇口から出る水は
絶対に飲めないことや
バンコックのように裁判所でさえ賄賂次第で白を黒にし、
黒が白になる法と秩序のない怖い面もあって、
旅行者だから行った土地々々が
信施インで強烈に見えるのだろう
(税関で賄賂取られる)。
とりとめもない原稿になったが、
場面が余りにも早く移り変わるため、
頭の中の整理がまったく出来ていないことを知る。
これは帰ってから充分に整理すれば
充分面白い原稿が書けるのではないか
と今から楽しみにしている次第。
★あすは本紙とご対面
明日の楽しみはクアラルンプールのホテルに
当社の新聞が多分届いていることで、
まず相場表を眺め、
小豆相場を身近に思い出すことかもしれない。
華人の新聞を買って読んでみるが、
英国の政治と金価格ばかりが大きく取り扱われている。