昭和の風林史(昭和四九年三月二日掲載分)
月の初めは安いという変な癖がついてしまったのか、
大勢強気、目先逆張り型の相場になった。
「仕る手に笛もなし古雛 たかし」
一万七千円には壁がある。
この壁を一気に突き破る必要はない。
押したり突いたりして値段が固まってくる。
いまの相場は買い方にとって〝先憂後楽〟型である。
湧いたところ(目立つ売り店が踏んだりするところ)は
静かに利食いの玉をはわせる。
まさしく熱狂しないところがよろしい。
見ていると半値戻しのところで押し目を入れた。
そして三分の二戻し地点で再び押した。
定法にかなった、まるでケイ線初歩講座を
絵に描いたような相場だ。
時期的にもいま斜め急角度(たいがい83度)で
値を出しきるところではない。
そんなことをしたら、相場の寿命が短命に終わる。
玄人筋は春の需要期入りで人気ばかり先走るから
千円ないし千五百円の深押しが入ろうと警戒気味である。
ここは安くして消費を伸ばさなければならない。
ところがカラ元気でやや軽薄さが見える。
あるいはそうかもしれない。
思い出すのは昨年十一月中の相場だ。
いま三月限の一代棒を見るとそれが残っている。
一万三千五百円と四千八百円の千三百円幅の中で
Wという字、Nの字を日足線は辿ってダンゴになった。
先限引き継ぎ線では五千円と六千二百円間のダンゴである。
結局十一月のその相場は年末にかけて
火柱を立ててしまうのだが、
それに似た逆張り型を今回も繰り返すのではなかろうか。
しかし大勢的には買い方針を持続しなければならない。
特に七限、八限には
ず買い玉を残しておかないと後悔するだろう。
終局的にはこの相場二万四、五千円。
狂乱怒濤の場面がなければおさまらないはずだ。
目先を巧みに泳いで大相場でパーにするか、
先憂後楽、悪目、悪目を大局方針で買い込んで
大きく勝負するか各人各様。
●編集部注
日柄と値幅と波動―。
相場解析ではこの3つが非常に大切とされる。
玄人中の玄人は、これに角度の要素を加える。
これも波動の一種というべきなのであろうか。
金利でもスティープ化やフラット化など
角度を重要視するポイントがあるが、
大抵角度が取りざたされる時は
どの銘柄であれ大相場になりやすい。
文中にもあるように、
この時の小豆相場の日足罫線はまさしく
〝ケイ線初歩講座〟のなかで必ず登場する定石中の定石が
要所要所に。
一番の目玉は三月四日の足である。
【昭和四七年三月一日小豆八月限大阪一万六七七〇円/東京一万六六八〇円】