昭和の風林史(昭和四九年二月十九日掲載分)
人々がこの相場の凄さに気がつくころには
全値を戻しているだろう。
完全大直りの相場である。
「鮒のぼる田川が岐れ風わかれ 秋桜子」
五百円幅は押すだろうという。
いや押しても二、三百円だろうともいう。
押し目を警戒しているあいだは、
押し目待ちに押し目なしである。
押し目を考える心理状態を考えてみよう。
①一万六千円という値段にこだわっていないか。
②下げ幅の半値戻し地点を重視する。
③相場全体のスケールを大きく見ていながら
大手直りとは考えず
大逆張り相場の範囲内での考え方が
支配していないか。
④押したら買おう、今度は買い遅れだ―
という考え。
⑤いつもそうだが、利食い玉の利食い急ぎ。
筆者は
全値戻しまでは考える必要なしだと思う。
すでに大相場の出発である。
立春大吉二月四日に大底をしている。
現物は売れだした。産地は買い戻しに積極的。
輸送事情は先行き悪い。
作付け動向も他の雑豆が割りを出しているため、
小豆は減少しよう。
大豆、手亡が増反になりそう。
夏の天候が大きな材料になる。
ますます凶作不安が濃くなる。
今年の異常は流氷の発違にも見られる。
流氷現象は例年の二、三倍で
一週間~十日早い。
低気圧が例年より西寄りで発達したため、
北または北東の風が強まり流氷が押しつけられた。
この現象は昭和三十八年
(異常気象・五月異常乾燥・強風被害。六月晩霜。
七、八月大雨被害、降雹。九月降雹。十月大雨)
に類似している―。
異常気象は帯広の積雪
ただいま零という面にも現れている。
今年の夏の北海道は普通でないぞ
―と思うのだ。
相場は、これから踏み上げ現象と、
積極新規買い現象で上昇ピッチは急であろう。
異常気象の昭和38年は
二月19日六千八百五十円から
→三月8日七千六百九十円
→四月12日八千八十円
と斜めに階段を駆け登った。
とにかく今言えることは
①相場が若い
②戻りでなく出直りだ
③人の気も暖候期に向かい活発で陽気になる
④需要期に向かう
⑤まだ市場は強気になりきっていない。
左様。人々はこの相場の凄さ(大きさ)に
まだ気がついていないのだ。
●編集部注
新年からの下落が反発して、
この時相場はちょうど半値戻りの値位置。
まだ進むか、戻りは終わりか、
思案場所である。
何事も永劫続かない。
当時、朝日新聞朝刊では
「サザエさん」が連載されていたが、
作者病気のため、二四年近い連載が
この頃に終了する。
【昭和四九年二月十八日小豆七月限大阪一万六〇三〇円・二二〇円高/東京一万五八五〇円・一七〇円高】