昭和の風林史(昭和四九年二月十四日掲載分)
五千五百円以下は下げ過ぎだった
―という事になる。
底入れ→自律戻し→大出直りのパターンだ。
「梅見るやつとめは遠き日のごとし 民郎」
小豆相場は、案外全値戻し(大発会の水準)を
難なくやってしまうのではないかと思う。
というのは、これといった硬材料もないのに
反発する姿勢というか、その態度が誠によろしい。
この事は、相場に底が入った→自律反騰→出直り。
そして、五千五百円以下は、
下げすぎの値段であった(のかもしれない)事を改めて知る。
産地筋は安値にそっぽを向いて頑として売ってこない。
見る者にすれば、農家は欲の上に欲の皮が突っ張って、
いい加減強欲に思うだろうが、そうではない。
①生産コスト上昇。
②懐ろにゆとりがある。
③今年の天候を楽観していない。
④輸送事情が悪い。
⑤汗も流さず、ひと握りの豆も生産しない投機家に
そうそう勝手に値段を決められては面白くない。
消費地の二万円相場は必ず実現するはずだ
―と生産者は期待し、
そして本年の天候に賭けている。
相場とは面白いもので、高くなると買いたい。
突っ込み安値で、かなり売り込んだ取り組みが
蠢動してきた。
おやおや―の相場である。
こんなはずではなかったのに―。
関西では両建てのことを〝パッチ〟という。
パッチとは、ももひきのことである。
高値掴みをして安値でパッチをはいて、
はいたパッチのまたパッチ。パッチに底なしである。
切り違いパッチなどと申し、
仏さまのお手手のように左手の人差し指は天を示し、
右手の指は地を示し、天上天下唯我独尊。
さて、きのうも書いたように
五月限で半値戻し地点の一万五千七百三十円。
七月限は五月限にサヤすること三百円を買うから
先限で一万六千円地点。
振り返れば半値を折り返す峠の茶屋だ。
こうなると突っ込みを叩いた玉に追証がかかる。
ベルが鳴るなり電話のベルが追証入れよか、
ララ踏みましょか―。
逆に辛抱していた買い玉が逃げ腰になる。
水風呂で辛抱していた人たちが、
少し温かくなると、あわてて飛び出す。
そして、なお強く見えると今度は飛び付き買いをする。
いつもの相場である。
構う事はない。丸太棒のように図太く強気すべえ。
●編集部註
やってみると判る。パッチは楽なのだ。
張る側も、張らせる側も。
【昭和四九年二月十三日小豆七月限大阪一万五七四〇円・八〇円高/東京一万五六六〇円・一〇〇円高】