昭和の風林史(昭和四九年一月十七日掲載分)
他商品相場市場の沈滞で、
生命力のある投機資金は、
大器晩成型の小豆市場に移動しつつある。
「松過の又も光陰矢の如く 虚子」
一万七千円どころが固まれば、
これを足場にして
強い場面が期待出来る小豆相場だ。
一万七千円あたりを買って
一万八千円を目標にするような考えの人は
少ないと思う。
一万七千円を買うからには、
時間がかかっても二万二、三千円目標
ということになろう。
それにしても小豆相場は随分〝おとな〟になった。
危ないと思う地点、この場合、
主務省や世論に対してだが、
そういうところにくると、
相場そのものが自粛的機運となり、
暴走することがない。
過去幾多の苦い経験で、
小豆市場は市場維持のための節度を身につけた。
ひとつには、在庫が豊富で48年産が
豊作であったことも幸いしているし、
また、市場参加者が広範囲にわたり、
地場筋の力だけで、
操作が出来る段階を越えたことも、
行き過ぎ暴走市場破壊の弊を免れている。
総じて世に名高い阿波座筋は
昨年後期の相場で完全に疲弊した。
事情に精通している人に言わしめれば
『阿波座筋が沈滞している時は
市場が安泰である』という。
わが愛すべき阿波座筋も
時を得れば再び雲を得、
土を巻いて重ね来たる ことであろう。
勝敗は兵家の常、
勝ち負けは時の運である。
さて、去年は
桑乾(そうかん・河の名前)の源に戦い、
今年は
葱河(そうが・有名なパミール高原に流れている河)の道に
戦う。
兵を洗う条支海上(地中海のこと)の波。
馬を放つ天山雪中の草。
万里とこしえに征戦。
三軍ことごとく衰老―という
李白の詩〝城南に戦う〟は続けて
士卒草芒にまみれ将軍空しく爾(し)か為す。
即ち知る相場なるものは是れ凶器、
聖人はやむを得ずして之を用いたるを―と。
相場は、しないほうがよい。
だが人々は、やむを得ず戦う。
11日と14日、
一万七千円を大引けで叩ききれなかった小豆。
こうなったら大発会の値を取りに行って
一気に八千円突破というコースにはいるだろう。
一月前半を押しただけに後半からの勢いは
一万八千三、五百円という新値街道に躍り出ると見る。
烽火燃えてやむ時無し野戦格闘続かん。
●編集部注
この時はまだ、
前年九月から続く上昇トレンドの範疇で
推移していた。
この動きが急遽崩れる。
商品相場に限らず、
大発会付近の相場は
唐突に荒れる事が少なくない。
この時の小豆相場も、唐突に荒れ模様になる。
【昭和四九年一月十六日小豆六月限大阪一万七三八〇円・三四〇円高/東京一万七二九〇円・二七〇円高】