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新刊・書評

書評  ニッポンの底力  10月11日 (2011.10.10)

何もかも失って底力

米国のバトン引き継ぐ日本

講談社+α新書

町田宗鳳著   838円税別

偶然から生まれた本という。3・11をきっかけに比較文明論の立場で日本を検証。今後の展望を述べたもので、思ったよりいい出来映え。学者だけに現場知らずだが、14で出家し20年京都大徳寺で修行。34の時米ハ―バード、ペンシルべニア大でも神学の博士号を取得した変わり種。プリンストン大、シンガポール大、東外大などで教鞭をとり著書多数。江戸時代の禅僧で至道無難の「死んだつもりで生きるのが一番いい」を紹介し、「生きているだけでいいんです」という。目次は、第1章復元力をもつ日本文化、第2章フクシマは文明の折り返し点、第3章日本の進化に不可欠な首都移転、第4章母系性社会と女の力、結びに第5章アジア文明の夜明け。米国から間もなくバトンタッチを受けるアジアの中で、文明を引き継ぐのは日本というものの、国民がその役割を自覚しないと実現しない。そこで「フクシマ・プロジェクト」を立ち上げ、既存エネルギーのほか太陽光や風力地熱・バイオマスなどポスト原発。日本で新産業革命を起こせと呼びかける。そもそも、底力は何もかも失ってから出てくるもの。日本の神々は、人間以上に人間的な愚行をやってのけると笑わせる。