昭和の風林史(昭和四八年十一月二十日掲載分)
指し過ぎ、打ち過ぎ、買い過ぎ。
いずれも必ずとがめが出る。
小豆相場は頭を打っている。
「荒波の間近に蒔きし冬菜かな 汀女」
北海道の生産者が、納得のいく値段を眺めて、
それでも小豆を売ってこないというのだろうか。
収穫したものは年末が接近するに従い
換金しなければならないだろうし、
輸送事情が悪いのなら、
年末緊急輸送物資に指定してもらってでも
輸送出来ない事はない。
幸い消費地には旧穀の在庫が豊富にあるし、
消費のほうも伸びていないから、
品ガスレという異常事態にはならないが、
誰も彼も皆次々と強気になって買うようなら、
きっとこの裏目が出るだろう。
国会開催となれば
物価高騰に頭をいためている内閣だけに、
商品取引所の先物相場について、
いつ、なにが飛び出してくるか判らない。
目に余る投機行為に対し
制裁を加える事もあり得よう。
農林省当局は来月から小豆などの大口委託者を
毎月報告するよう各穀取に義務づける。
これも一種の物価対策である。
また、十二月発表の小豆収穫高が
予想していた以上に大幅な鎌入れ不足だとすれば、
もちろん小豆輸入の外貨ワクの繰り上げ発券
という手段も採ることが出来る。
市場人気は①鎌入れ不足②輸送難③諸物価高騰
④巨大な投機資金―という要因を、
さらに拡大して眺めようとする。
しかし、先限一万五千五百円以上には
想像もつかないほど大衆筋が買いついた。
仕手期待、インフレ期待の買いである。
果たして
それらの買い玉が利食い出来る水準まで、
この相場が上伸するだろうか。
野も山も、見渡す限り強気一色
という感じである。
年内に産地の小豆が出回らなければ、
そっくりそのまま産地の現物は
来春に持ち越すわけで、
この事は、なにを意味するかといえば
先限、先限と、
いま行なっている先限集中買いの戦術の挫折が、
どこかで必ずくるのである。
ここで小豆の線型は
三月限で一万五千百四十円、
四月限の六千三十円は完全な頭である。
千五百円幅を急落して、
一瞬買い方の心胆を寒からしめたが、
強引にこれを反撃してみたものの、
やはり三月限の一万五千円、
四月限の一万六千円の壁は厚い。
将棋でいえば指し過ぎ、碁でいう打ち過ぎ、
今の小豆でいえば買い過ぎで、
そのとがめは必ず出る。
●編集部注
この読み通り、間もなく〝とがめ〟が出る。
騰がるために下がる相場があるが、
最後の下降5波動目は、
まさしく
次の暴騰のためにある〝誘い下げ〟の場面である。
【昭和四八年十一月十九日小豆四月限大阪一万五三六〇円・二九〇円安/東京一万五三一〇円・二一〇円安】