昭和の風林史(昭和四八年十一月十四日掲載分)
因果玉鈴なり。これが仕手期待で投げない。
一方、売り警戒が強いため
売らないから相場は悪性だ。
「行きずりのよそのよき子の七五三 風生」
崩れた小豆を眺めて、誰もが、
このまま下げるはずはない。
きっと買い方が
強烈に巻き返してくるだろうと期待もし、
またそう信じ、下げたから強気がふえる
という妙な現象を見せた。
本来なら天井打ち、
三千円崩しという声が
あってもおかしくない相場だ。
先限引き継ぎ千円棒は
綺麗に四段上げしている。
そして七月13日大天井から秋にかけての
大暴落八千八百円下げの三分の二を戻し、
日柄も九月11日から
十月、十一月と三カ月にまたがっている。
決して若い相場といえない。
しかも買い方は
尨大なちょうちんがついているし
高値で買い玉が広がった。
商いの中心は、あくまで先、先と
先限陽動の方法が採られ、
集中的に先限サヤを買って煽るわけだが、
これはいうなら
蛸が自分の足を食っているようなもので
〝蛸配〟ならぬ〝蛸鞘〟相場である。
作戦としては
成功しているように見えるが、
決して楽な戦いではない。
実需が伸びていない。期近限月が重い。
仕手筋が買っている間だけ値が持つ。
相場自身に浮力がない。
人気は単なるちょうちんだけだ。
買い方に幸いしているのは
流通事情が悪いというだけで、
来月から国会が始まれば国会が始まれば
物価問題が当然焦点になろうから、
農林省も今までのような
手放しの傍観者の立場をとるわけには
いかなくなる。
買い方は先週桑名筋だけで
二千枚の玉がふえて七千五百枚の買い建てと
市場では見ている。
当然、下げ波動には抵抗してこようが、
高値買いつきの、ちょうちんが多いだけに
失地回復のための戦力投入は
相場にヒビが入る前と、
入った今とでは
量的にも違ったものを必要とする。
見ているとガタガタの相場なのに
売るのが怖いという市場である。
買い方仕手の存在を、
余りにも大きく見すぎているから、
きっとその反動、裏の面が
年末にかけて出てこよう。
産地も下げ相場を見ては
売りヘッジを急ぐことになりかねない。
収穫したものが、
そっくり産地にあるのだから
これを売却するには定期を利用するしかない。
結局先元の一万三千円という値段があっても
自然の成り行きとなろう。
●編集部注
売れない相場は弱い。
下降波動が始まった。
やっぱり売りではないかと
自信を持って売ると、次の波動でやられる。
買い方も売り方も双方警戒して
動けなくなり、上下波動は伸びていく。
【昭和四八年十一月十三日小豆四月限大阪一万四六五〇円・五三〇円安/東京一万四七八〇円・二五〇円安】