昭和の風林史(昭和四八年十月三日掲載分)
「秋晴れの裾野に小さき小諸町 虚子」
関門商品取引所の開所20周年記念式典と
祝賀会は海峡を見下ろす下関マリンホテルで厳粛、
盛況裏に行なわれた。
集まった人達およそ三百名。
好天に恵まれ、晴々した表情。
北九州の曽根空港は、
さながら商品業界貸し切りのような賑い。
東京からは板付空港へ
関係者大挙して降りたち、博多から下関へ。
また前日からの下り急行寝台車
は商取関係者が多かった。
筆者は神戸商大の高橋弘先生と、
雨降る日曜の夜、
大阪南港20時20分出帆の
七千二百㌧、21・5ノットの〝すみよし丸〟に乗船、
風呂にはいり、お酒を飲み新門司港に向かった。
思えば五年前の関門商取十五周年の
十月一日も抜けるような秋晴れで、
唐戸の船着き場には
赤い羽募金のご婦人が並んでいた。
色鮮やか長い目の羽一本を抜きとって
胸ポケットに差し、
パーティーに出席したことを覚えている。
さて相場のほうは新ポ、
小豆も手亡も続伸した。
目立つのは
桑名系と見られる小豆の買いの手であった。
市場は俄然色めきたった。人気は強くなった。
ある人は大相場出現の前兆と受けとった。
相場の勢いから判断すれば
大底圏脱出のロケット発進を思わせるには
充分だ。
百九十三万俵の収穫も、
消費地八十五万俵の在庫も
すべて織り込んで火のような矢が飛ぶことは、
相場そのものが、なにかを暗示している。
その時、手亡は七月の高値圏に
早くも突入し、
世界的白系豆の高値に
歩調をそろえようとする。
だが、はたしてこの小豆、
こんなことがあるのだろうか。
確かに弱い人気の裏を衝かれた。
そして値段も下げ過ぎたきらいはある。
しかし、今、この価格になってみると
、少し調子がつき過ぎている。
安い値段のときなら、
強気のいう材料と要因は、
いちいちごもっともであったが、
人気が簡単に強くなり、
大相場を期待する人がふえてしまうと、
反落もまたきつくなるだろう。
小豆は、押し目買いの相場であるが
高値追いは危険である。
これから出回り最盛期にはいるのだ。
必ず人気で上げた分は
消してしまうであろう。
噴き値売りが勝つ。
●編集部注
爆買いと、バカ買いが出来る人間はやはり強い。
思惑通りになればなる程、
人は不安になり慎重になる。
この傾向はプロであればある程強い。
【昭和四八年十月二日小豆三月限大阪一万三〇五〇円・一〇円高/東京一万三一〇〇円・七〇円安】