昭和の風林史(昭和四八年十月二日掲載分)
小豆の噴き値は売りでよいと思う。人気が強くなれば必ず反動がくる。強気するには少し早い。
「新豆腐白味噌汁のうまきかな 聴骨」
証拠金が少ないということはちょっと相場が動いてもすぐ追証が迫るわけで、煎れ、投げが目まぐるしくなる。
小豆は安値を売り込んだのを狙われた。
そして悪材料は、およそ言い尽くされた。
そうなると人気の変化とは、面白いもので逆に小豆相場の見直しとなる。
旱ばつの影響で粒型が小さい。
鎌入れ不足になろう。
輸送事情が悪い。
倉庫事情もよくない。
農家は一万円では売ってこない。
品質としては本年産よりも古品、即ち47産のほうがよいからヒネが見直される。
世界的な穀物不足。
価格が安いから消費が伸びる。
他商品が沈滞しているから大衆の投機熱は証拠金の少ない小豆に集まる。
これからは焚かぬなればなるほど弱気がふえ、売ってくるだろう。
強力な買い仕手が介入するだろう。
鬼が笑う話とは一概に言えないのが来年の冷害凶作と大幅な減反である。
先物市場は将来を先見するものである。
ホクレンは大豊作だからこそ大量のタナ上げをするだろう。
参院選を前に農民に対して政府も価格維持に無関心ではおれない。
金詰まりとはいえインフレは進行する。
昨年でさえあの豊作の小豆を今年になって二万円近くまで買い上げた。
ケイ線的にも完全底入れの相場である。
大底の入った相場は買うしかない。
以上いずれも、相場の水準が低いときには、強烈に相場を刺激する諸要因となるのである。
水準が一段高、二段高と押し上げられると反対に今度は逆の要因が拡大され相場にのしかかってくる。
踏みが出尽くし、買いついた取り組み。金融逼迫により取引所が換金の場となる。大根時の大根。大豊作と大量在庫。売れ行き不振などと。
筆者は、この小豆相場が一本調子で直っていくとは思わない。
噴き値売りでよいと思う。誰も現物が欲しくて買うのではない。底練り不充分である。
●編集部注
人間とは、なんと矛盾した生き物かと思う。
今回の文章で積み上げられた買いのロジックをご記憶の上で今後の相場展開をご覧戴きたい。
後つけ講釈だが、相場はまさしくこのロジック通りに進展していく。
なのに「吹き値売り」としてしまうのだ。
【昭和四八年十月一日小豆三月限大阪一万三〇四〇円/東京一万三一七〇円】