昭和の風林史(昭和四八年十月一日掲載分)
棒立ちは売り 案外モロイ相場
踏み一巡するまで小豆は強張るが、案外にモロイ相場だ。湧いた小豆は絶好の売り場になる。
「稲雀にも夕暮や人恋し 汀女」
阿波座筋は小豆を弱気していた。その裏目が出た。
月末で週末で、しかも決算期末の九月29日は凄い交通渋滞で、その模様を夕刊に掲載するため新聞社の写真班はヘリコプターを飛ばしていた。
相場のほうは小豆と手亡がストップ高である。安値を売った筋が踏んでいた。
岡地本社の福富常務は『繊維相場は金融引き締めで影響するだろうが、その点、穀物は金融情勢に敏感でないから、これからは小豆相場の時代になると思う。小豆は人気が弱いことから、煎(い)れによる案外な上昇相場に発展するかもしれない。小豆の強気方針がよい』―。
脇田米穀の阿竹専務は北海道から帰阪して『今年の小豆の粒型は小さく色が濃い。旱ばつの影響だ。意外なほどの鎌入れ不足といわれている。離れていた大衆も証拠金の引き下げなどで再び小豆に関心を持ち出した。生産費などから考え一万二千円は大底値となろう。私は強気する』―。
きょう新ポ。早や十月。第十ラウンドの試合が始まる。先限に三月の需要期限月。
ここで手亡は戻り新値に買われ赤い炎の矢は飛んだ。きょう、もう一発のS高は一万四千円指呼の間に買われることになり、これが小豆相場を刺激しかねないが、手亡のあまりの急な暴騰は産地農家の換金を急がせることになりかねず、また規制強化を呼んで、せっかくの相場が〝若死〟するかもしれない。
弱気したりカラ売りするのは危険な手亡であるが、高値飛びつき買いは感心しない。買い玉利のあるものは利食いが無難。
一方、小豆相場は線型では綺麗すぎるほどの買い線だ。千円棒も立った。
人気が弱過ぎて、安値を売り込んだだけに一巡踏みが出なければならない。
怖いのは大衆人気である。証拠金が安い。専業取引員の営業体も小豆に戦力を集中してくる。
ただし、ここで小豆が人気化するようなら、なにしろ大豊作の出来秋である。現物裏付けの売り物が嵩むだろう。
まだ、一本調子で強気する小豆ではない。湧いたところを売ればよいだろう。
●編集部注
経験則上「相場脳」では逆張りが書きやすい。
順張りは後追いで昇り梯子を外されるのが怖い。
ただこの脳、必ずしも「当たり屋脳」と限らないという点は重要である。
【昭和四八年九月二九日小豆二月限大阪一万二二〇〇円・四九〇円高/東京一万二三七〇円・四七〇円高】