昭和の風林史(昭和四八年九月二十六日掲載分)
嫌になるほど遠くて長い閑な相場になるだろう。
押し目買い人気で買えば底が抜ける小豆だ。
「一力の高脚膳の栗の飯 春子」
23日夜から24日にかけて
北海道南部を襲った集中豪雨は函館地方を
中心とした局地的被害にとどまり、
北海道の豆作には影響しなかった。
25日朝寄りの相場を見るまでは、
ひょっとしたらS高も
―と小豆の買い方は期待したが、
局地的豪雨に終わり、相場に影響しなかった。
思えば今年の北海道の豆作は
過去に例を見ないほど幸運に恵まれた。
遅霜にも低温にも、また病虫害もなく、
一時的な旱ばつのみに終わり、
そして今、収穫期に入って、
早霜の不安も、
いつもの年ほどきついものではない。
また台風がまったく上陸しなかったのも珍しい。
異常気象といわれながら
このように、奇蹟のような無事平穏は、
めったにあるものではないが、
世の中、ツキというものは理くつの外にあって、
出足からケチがつくと
小豆の作柄でも次から次にキズがつく
半面うまくいくと
災害を縫うように避けて通ってしまう。
相場は、
ようやく閑散、低迷の場面に入った。
下値には長期方針の値ごろ買い、
上値は目先筋の戻り売りが待機している。
材料としてはホクレンの棚上げが、
いつ、どこで、どの程度、幾らの値段で
実施されるか―に絞られる。
それにしても市場は閑になってしまった。
相場というものは、
ひとたび閑になると、
より沈潜していく性質を持っている。
閑だから手を出さない。
手を出さないからさらに閑になる。
それは音のない世界に沈んでいくようなものだ。
ケイ線は斜め肩下がりの下段の底練り
―放れ星一ツとでも名づけるべきか。
きょうの納会と、
新ポの三月限生まれのサヤを見てからでも
充分仕掛けられる相場である。
強気するなら先限一万一千円割れ。
弱気するなら一万二千円近辺。
その間にも北海道は刈り入れが進む。
消費地在庫八十五万俵。
新穀収穫百九十三万俵。
輸入品の上乗せ七万俵。
総計二百八十五万俵プラス府県産内地小豆。
それはマンモスのような
今流でいえばジャンボ型供給である。
簡単には相場が立ち直れるものではない。
嫌になるほど閑になるだろう。
●編集部註
大相場になるほど退屈なものなのだという。
未経験なので分からない。
退屈直前に余計な事をして、
自ら死地に追い込んでしまうからだ。
【昭和四八年九月二五日小豆二月限大阪一万一七四〇円・二五〇円高/東京一万一九六〇円・三七〇円高】