昭和の風林史(昭和四八年九月十三日掲載分)
弱気が多いほどよろしい。
戻り売り人気で売り込みが増大すると
悪目安心買いの相場になる。
「枝豆や客に灯置かぬ月明り 水棹」
それぞれお家の事情がありまして、
〝場勘〟を払ってばかりもおれない。
金繰りの関係で一発このあたりで
〝場勘〟をとりに行かなければならないのである。
一夜明けると市場は様変わってストップ高である。
うさぎうさぎ、
なに見てはねる十五夜お月さん見てはねる
―という歌もある。
これでどうなる。
下げ過ぎの訂正である。
人気面は戻り売りが支配するだろう。
そしてまた安いだろうが、
相場は一応底値を形成した。
本格的なスケールの大きい上昇相場は、
いずれ先に行ってからのお楽しみである。
それまでに、しておかなければならない事がある。
底練りである。
いまこの相場が①下げ過ぎの反動と
②店の懐ろの場勘関係や③長期思惑買い
④そして産地の天候の悪化
⑤規制の全面解除―などで買われるとして、
上限は先限で一万二千二、三百円どころと思う。
仮りに人気が
燃えて勢いがついても一万三千円はどうだろうか。
聞いていると誰もが弱気を言いすぎた。
強気する材料とてなかった。
即ち陰の極である。
筆者は思う。
買われてそしてまた売られようが
彼岸底になるだろう―と。
玉整理は終わったのである。
内部要因はスッキリした。
相場地合いが硬化すると人々は
再び強い材料を探してきて、
のたまうだろう。
世界的な穀物不足。
来年も世界的な異常気象。
インフレ基調は不変等々。
そんな事はどうでもよいのである。
証拠金が六万五千円というもとに戻ったこと。
よく動く相場には人気が集まること。
下げ相場で損した人が、
元気を出して、
よし取り戻してやろうと仕掛けてくること。
そして、作柄と在庫量をみて
弱気する人が多くなるだろうということ。
カラ売りが増えなければ
大きな相場にはならない。
売る人が一人でも多いのがよろしい。
弱気を言う人が周囲にたくさんいたほうがよい。
方針は高い場面を追いかけず、
安いところを買うのがよい。
強気の時代がやってくるのである。
荒れた市場は復興期にはいる。
一本調子にはいかないだろうが
元気を出して強気で行こう。
●編集部注
機を見るに敏。義を見てせざるは勇無きなり。
今回の文は、己を鼓舞するための檄文とみる。
ただ大卒銀行員の初任給六万円の当時、
戻ったとはいえ証拠金六万五千円は
やはり高いと感じた。
【昭和四八年九月十二日小豆二月限大阪一万一一八〇円・七〇〇円高/東京一万一〇一〇円・七〇〇円高】