予想以上の滑り出し 文溪堂 9月8日 (2015.09.07)
業界ぎりぎりの攻防
50年か100年に一度のチャンス
文溪堂(9471)は好機。小学校の現行「学習指導要領」全面実施から5年目。50年か100年に一度のビジネスチャンスを迎えた。2018年度約60年振り道徳が教科になるほか、20年度以降小学校3年生英語必修、同大学入試センター試験廃止など文部科学省の軌道修正様変わり。土曜授業の実施、小中一貫教育の制度化(改正学校教育法が6月に成立し来年4月から開校可)、学校教育のICT(情報通信技術)化など並み外れた対応を迫られたのが主因。円安に伴う教材・教具のコスト高も業界共通の課題。生徒や児童をリードする先生の負担に拍車がかかり、同社にそれ以上の先行投資が求められていることも事実。ところが、1Q連結2.0%増収、1.5%営業増益と予想以上の滑り出し。1学期品に上刊・年刊品の売り上げを計上し、これに見合う営業関連費用を確定できないため、2Q以降調整されるものの上々。2018、20年度以降の計がたった。通期でも文科省の15年度一般会計予算0.3%減(5兆3378億円)に対し増収を確保。採算の改善に全力を挙げる構え。1958年1349万人とピークに今年5月現在654万人(51.5%減)の児童数から見ても、直近連結6期連続増収に見どころ。2020年(創業120年)に向けて仕込みが増益につながれば本物。出版(前期連結68.2%)、教具(同31.8%)ぎりぎりの攻防が予想される。出版で国語や算数の力、てんまる2015(1年間の指導と評価をトータル支援)、ティ―・コンパス(校務支援システム)が受けているほか、円安をかぶり割高になった教具の調達を中国一辺倒からアセアンに拡大。合理的な仕組みに改めるという。話題になったのが、バムケロ20周年(シリーズ累計500万部)を振り返り、物語に登場するレシピをまとめた「バムとケロのおいしい絵本」。3月初版でとっておきという。5刷を数える「100にんのサンタクロース」も人気。さらに、「クロッサム」(家庭科カタログ)の216ページに圧倒された。文科省が8月25日、全国の小学6年と中学3年を対象に4月実施した学力テスト(213万人参加)の結果を発表。正答率上位に秋田と北陸3県が目立ち底上げも顕著。中でも同社の地元岐阜県が中学校国語Bでトップレベルに躍進している。
2016年3月期(連結)は、売上高113億2000万円(0.6%増)、営業利益4億4500万円(36.2%減)、経常利益4億4000万円(36.9%減)、純利益2億6000万円(40%減)の見通し。配当15.40円(中間7.70円)の予定。15年度に小学校教科書の改訂があり編集費用50%。テスト教材を基礎と応用2種類つくり、得点集計や個人別診断ソフト、果ては校務支援システムまで倍以上コストをかけているのが特徴。ひき出しが多いほどソリューション(問題解決)に有効という。8月28日、水谷清吉元社長(邦照会長の父)が93歳で物故。後日お別れの会がある。同社は今年から上昇運。2016~17年運気好調。人に頼らない努力家でサービス精神旺盛な社風。川元社長(65)も次々手を打ってきた。