証券ビュー

森羅万象

噴き値売り勝負 買い方立ち枯れ (2015.07.15)

昭和の風林史(昭和四八年七月九日掲載分)  

買い仕手は値を維持することに懸命のようだ。
内部崩壊が始まる兆候が見える。
噴き値売りで勝負。

「釣しのぶたしかに何処か降っている 万太郎」 

買占め規制法で指定された十六品目のうち
羊毛、毛糸、綿糸、大豆、生糸と
取引所先物市場の上場商品が
五ツもはいっていることは、
商品業界にとって今後に大きな問題を提起した。

買い占め、売り惜しみ規制法は、
報告を求めたり、立ち入り検査して、
買い占め、売り惜しみをやめるよう、
心理的な面の効果を狙ったものだが、
この裏には必ず税務署が
くっついているだろうと言われ、
その効果は徐々に発揮しそうに思える。

田中総理の記者会見で、
十月までに物価を抑える
と言明していることから
政府は次々と
強力な手を打ってくることも予想できる。

小豆相場のほうは買い方次第という動きだ。

買い方が積極的な手をふれば
下げようとしている相場でも急反発する。

こういう状態がどこまで続くか、
続いているあいだは
安値を売るのは危険である。
むしろ、仕手筋が煽り上げたところを軽く売る。

各市場とも仕手の活動を規制する動きになった。

買い方大手にすれば、
サヤを買ってどこまでも突っ張りながら、
折りを見つけて新穀出回りまでには
戦線を整理しなければなるまい。

買い建て玉と
手持ち現物に見合うだけのものを
売りヘッジしなければならないが、
仮にもその気配が見えたり噂になれば、
今の相場はガタガタになろう。

市場の噂というものは
案外真実に近いものを伝える。
過去の大仕手戦でも、噂になったことを
仕手戦が終わったあとで調べると
案外真実に近かったことを知る。

今の小豆の買い仕手が
世界的な穀物不足、世界的なインフレ、
換物思想で思惑しているとしても、
新穀の出回ったあとも、
なお買い続けるということは、
とうてい考えられない。

どこかでサヤがすべり落ち、
また、なにか新しい突発現象が発生して
相場の基調が今までとは違って
その裏目が出ることは、
充分に予想出来ることである。

いま仮にこの相場がなお一段高したとしても
二万円の声を聞けば、
さらに規制は強化され、
商いはもっと淋れるだろう。
品物が無ければ貼り付け天井だが
今年の場合、そうはなるまい。
山高ければ谷深しだ。

●編集部注
相場に政治家が出てくると一つの節目になる。

何であれ、物事が紛糾して
ニッチもサッチも行かなくなった時、
出て来て話をまとめるのは
大物のヤクザの親分か政治家と
〝相場〟が決まっている。

【昭和四八年七月七日小豆十二月限大阪一万八一九〇円・八〇円高/東京一万八四五〇円・一九〇円高】