証券ビュー

森羅万象

悪夢の三日間 整理完了反騰へ (2015.04.13)

昭和の風林史(昭和四八年四月九日掲載分) 

だいたい整理が終わった。値幅五千円。
失神しかけるような凄いものだったが、
今週底値を確認す。

「行列をぬけ出る稚児や花祭 無声女」

一万円を割るなどと、よもや思っていなかった。
相場はこれだから怖いし、また面白い。
それにしても、今回の下げは失神せんばかりである。
いかに買い仕手に
大きな〝ちょうちん〟がついていたかが判る。
ちぎっては投げ、投げてはちぎって、また投げる。

全商品、まさしく悪夢のような三日間である。
すべてはきつい反動であった。

おりからミシシッピ川の氾濫が伝えられる。
大相場師・近藤紡=近藤信男氏が
今日あるは、ミシシッピ川の氾濫という風雲に乗じて
綿花、綿糸、綿布の大投機を敢行したことによるものだ。
今回の氾濫はミズーリ、イリノイ、ルイジアナ、ケンタッキー、
テネシー、アーカンソー等七ツの州にまたがるもので
大豆、とうもろこし、小麦、綿花等の被害は
予想を上回り、
これがいずれ世界の穀物相場に影響をもたらすだろう。

天災は先物市場の買い方にとって、
好運の女神であり、風神である。

先物市場の存在価値は予測出来ない天候、天災などから
生産者、流通業者が身を守るためのものである。

〝ミシシッピの賭博師〟などという映画があるのも、
この地方はたえず天災が多く、
自然、風土的にも
投機師や賭博師が雲集しやすかったのかもしれない。

さて、下げも下げたり当限一代で五千円幅。
八月限一代でも五千円替え。
まいった、まいった本当にまいった。
おりから〝謹啓 投機家殿 追証は怖くない
あなたの追証引き受けます〟
というにくい広告(本紙)が出ている。
ほんまかいな。筆者は電話してみた。
どうぞ来て下さいという。
五、七百万円から四、五千万円。
24時間以内に現金を揃える。
世の中いろいろ商売があるものだと感心する。

どうだろう。小豆相場は
投げるところと目(もく)された目立つ玉は
投げ終わったようだ。
もちろんこの間、
須々庄のお客のK氏のように
一億円を軽く利食ったという人もある。
高値の因果玉を頑張っている人もある。
映画〝真昼の暗黒〟のラストシーンは
『最高裁がある』と絶叫するが、
失神しかけの小豆の買い方は
『天候相場がある』―と望みをかける。

●編集部注
前にも書いたが、
この当時の慶応大工学部の年間授業料が二十万円だ。

少し前の小豆相場一枚の証拠金が
この額であったがこの変動だ。
追証だけでなく、臨時増証拠金等もあったのではないか。

【昭和四八年四月七日小豆九月限大阪一万一三一〇円・二七〇円安/東京一万一四一〇円・一八〇円安】