証券ビュー

森羅万象

弱気は危険だ 凶作予想を買う (2015.03.25)

昭和の風林史(昭和四八年三月十九日掲載分)
小豆相場は強気方針でよい。
冷夏予想とインフレに変わりはない。

出直りは案外早いだろう。

「何迷う彼岸の入り日人だかり 鬼貫」

農林省は小豆の輸入ワク(47年度)を拡大した。

三百二十万㌦の割当は、
中国小豆およそ一万㌧輸入に見合うものである。

しかし相場のほうは先刻織り込み済みである。

中国が果たして、それだけの量を輸出するか。
仮りに商談が進んでも入荷の時期は随分先の事になる。

まして、倉庫という倉庫、只今現在どこの倉庫も品物で一杯。
買い占め物資もあるだろうし、国鉄順法闘争の影響もある。
いやそれ以上に日本の経済面における流通経路が
革命の途上にあって、値上がり、買い占め等の
思惑要素がからむため、
簡単に品物を輸入したからとて、
倉庫に置ける状態ではない。

小豆を緊急輸入しても
指定倉庫で証券を組まなければ
相場がどれほど高かろうと渡すわけにはいかない。

それはそうと文芸春秋四月号で
〝饗宴の時代から飢餓の時代へ〟
―は読むものをして寒気をもよおす。
気象庁図書課の根本順吉氏は
世界の異常気象を判りやすく説明している。

文春四月号は豊かさの終焉と題して特集を組み、
このほかに〝日本株式会社石油倒産す〟。
〝自民党が野党になる日〟
―など、充分に読ませるし、考えさせられた。

また、相場、物価を考えるうえにおいて
ダイヤモンド社の旬刊〝経済情報〟連載の
「インフレと株式」が大変参考になる。
大正時代のインフレ、昭和六年以後のインフレが、
いかにひどいものであったか、
その構造を分析している。

例えば昭和六年横浜生糸五六五円が同十年一、〇七一円。
89%高。大阪綿糸20単九二円が昭和十二年三倍の二八三円。
米一石一八・35円が三五・6円という値上がりを示し、
現在のインフレが、
まだまだ序の口である事を知らしめるのだ。

小豆相場にしても、
古い考えの需給観やケイ線主義、
あるいは値ごろ観は、やはりついていけなくなろうし、
それらの動きが理解できない事は、
とりもなおさず相場に逆らったりして、
取り返しのつかない大損をまねく事になる。

要は視野を広く持つ事である。

そういう観点から小豆相場を考えれば、
中途半端な弱気観は無用であろう。

●編集部注
 相場は一筋縄では行かぬ事は誰でも知っている。

 そして相場は意地悪だ。

 信念を持って臨まなければならないが、
そんな信念が揺らぐような相場がやって来て、
損切りした所で思惑通りになる。

【昭和四八年三月十七日小豆八月限大阪一万四一一〇円・九〇円安/東京一万四一八〇円・一一〇円安】