昭和の風林史(昭和四八年三月十二日掲載分)
小豆も手亡も夏の天候不順を予測して
買い一貫である。
今週深押しあれば絶好の買い場になろう。
「芹くへば裏山行きをまた被り 四月草」
規制は強化されても、穀物市場だけは
立ち会い停止になるようなことは
無いと思うけれど、
天災期にはいって、不順な天候が続き、
小豆の作柄が悪ければ、
これは二万一千円という過去の高値を
抜いても仕方がない。
そして九月、十月という端境期に向かって、
二万円台の波乱となれば、
やはり値段についても取引所相場は
規制を受ける事になろう。
それまでに儲けておこうという積極的な動きが
相場をエスカレートさせる。
しかも、こんなところでへたに大損したら、
取り返す場所がない―という焦りもある。
業者にしても、先に行ったら閑になる。
商売が出来ぬ。であれば、
せめて今のうちにという気持になる。
注目の北海道管区気象台の〝暖候期予報〟は
「日本の夏の天候はこのところ一年おきに不順で、
今年の暖候期も変動が大きく
六~八月の期間に二、三回の低温期があろう」
―と発表された。
週末、高寄りしたあと利食いで押したが、
大引けは再びこの予報を入れて小豆、手亡が新高値に買われた。
さて、週明けの相場と今週の動きを考えると―
週明け―高寄り。または逆に安寄り。
踏みがかなり出た。
予想していた暖候期予報が出た。知ったらしまい。
また、前週の伸びが急であった。水準も高い。
大幅な反落があっても、おかしくないだろう。
だが、深く押したところは買われる。当然だ。
今週押さずに、さらに火柱を立てたらどうなるか。
やはりどこかで、きつい押しが入る。
手亡も小豆と同じと見ておけばよい。
いずれ小豆は一万八千円だし、
二万円台であろう。
手亡の一万二千円だって
あり得ないとは言えない。
穀取業界は、過去に幾度も
立ち会い停止という場面を経験しているから、
かなり、きわどいところまで行っても
対応策はあるはずで、
生糸や毛糸のような事にはなるまい。
しかし一枚の証拠金が20万円、
建て玉制限も、さらに厳しくなることは
充分考えておくべきだ。
ともあれ、小豆も手亡も弱気は危険である。
●編集部注
当時の20万円の価値。
週刊朝日編纂「戦後値段史年表」で
大卒銀行員の初任給が6万円。
映画入場料は800円。
慶応大工学部の年間授業料が20万円と書いてあった。
【昭和四八年三月十日小豆八月限大阪一万六三〇〇円・二一〇円高/東京一万六〇四〇円・六〇円高】