昭和の風林史(昭和四八年三月十日掲載分)
「沈丁の香を吐きつくし在りしかな たかし」
小豆の千円棒は約三千五百円を赤線で立てて、
千百十円の黒線を記入したが、
すぐに切り返して倍返し地点を難なく買い切った。
従ってこの勢いは、千百十円幅押しの三倍返し。
すなわち一万六千六百円のところが目標となる。
過去の相場でもそうだったが、
一万三千円、五千円、七千円という奇数の大台は、
人々の意識にひっかかる節(ふし)になるけれど、
四千円、六千円などという大台は、
なんとも、あいまいで、キリッと締まらず、
従って一万六千円などという関門は、
関門であって関門でない。
ぼんやりと、霞のかかった大台は、
知らぬ間に通り過ぎてしまうものである。
生糸と毛糸が立ち会い停止で
人絹糸、綿糸も規制強化。
乾繭も手が出にくいところ。
こうなると穀物しかない。
きょう発表される北海道の三カ月予報は
恐らく不順な天候という事になるだろう。
知ったら仕舞いで、
長期予報発表が利食いのキッカケになり
押す場面があるかも知れぬが
押したらすかさず買われるのは見えている。
結局、こうなった以上は、
一万八千円も時の勢いという事になる。
そして手亡が大きく見直されるのだ。
手亡は一万円乗せの〝陣痛〟だった。
手亡の期近限月も、
限月別のケイ線を引いているひとなら、
先刻お気づきの通り。
三月限―大きな三角もちあいを上に放れたところ。
四月限―九千二百円の二ツの頭と
九千五百円の高値を買い切ると
上昇の斜線角度は鋭角になり、
加速度がつく。
エスカレートは剰数である。
一万円抜けへ。
五月限―四月限と、まったく同じ線型。
六、七月限-一万円乗せの〝陣痛〟が済めば
六月限の安値取り組み(九千五百円以下)が
踏んでくるし、
天候相場の七月限がリードして
S高連発の場面もあろう。
一万一千五百円目標。
手亡を単なる白い豆と見ずに
〝先物市場上場の商品〟と見れば
一万一千円が高すぎると言いきれない。
小豆も結局一俵二万円のものだろうし、
手亡がその半値でもおかしい事はない。
●編集部注
悋気買い、悋気売りは禁物
と先人は言う。
腹立ち商いすべからず
とも言われている。
感情を表に出し
相場に臨むとロクな事がない。
相場記事にビックリマークが入った時も同様也。
【昭和四八年三月九日小豆八月限大阪一万六〇九〇円・七〇〇円高/東京一万五九八〇円・七〇〇円高】