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森羅万象

春雷のごとき S安なれども… (2015.03.11)

昭和の風林史(昭和四八年三月六日掲載分)

 

小豆は買い主力の自粛で

一転春雷の如くS安。

しかし基調不変という見方支配。

「若鮎や保津の筏に行きがひ 東洋城」

三月五日のこの日の月齢は朔日。
小豆相場は春雷の如く朝寄りからS安。

きょう六日は昔でいう地久節
皇后誕生日である。
そして24気の一ツに当たる啓蟄
地虫穴を出る。

田山の山本博康氏より
灘酒造本年初の〝酒粕〟到来。

『酒カスとは語呂の悪い呼び方ですが、
御家族皆様と甘酒なり、粕汁なり、
そしてまた焼いて―』
と丁重なる一文を添えて。

ミツワ商品の内田社長より激烈悲憤の電話
『当社横浜支店の社員多数を
高橋茂が引き抜きよった。ぶっ叩いてくれ』。
すぐ神部茂氏に電話するもいまだ出社せず。
高橋茂氏に事情聞く。
高橋氏『内田君が激怒するのもよく判るが、
手順前後の行き違いあり、
電光石火対処するゆえ、
ぶっ叩きはしばし待たれよ。
先刻、東京穀森川氏よりも
TELありたるところ』―と。

その間、今週号の東洋経済の座談会に
風林さんは出ていますね―という電話しきり。

なんときょうは多忙なりや。
九州ゼネラル貿易の社員多数
神部軍団に走る動きあり。

太陽商品鎌田茂美社長辞任を知る。
穐原勝美、小谷利勝氏ら再建に乗り出す。

業界は激動している。

商いは閑になり、
残された市場も規制は強化の傾向。

さて、
小豆相場は如何なる動きになるや。

小豆は買い大手の大石系店の
思い切った手仕舞いが目につく。

主務省から→取引所。
取引所から→仕手機関店。
機関店から→顧客へと自粛要望される。

この日、在庫発表。
そして十日は長期予報の発表。

S安した小豆、すぐに反発。
巧者筋は五千円相場の初押しゆえに
買い方針不変という。

ふり返ればこの小豆相場、
一万円乗せから
各大台(千円、二千円、三千円、四千円)と、
それぞれ台乗せしたあと深押しを入れる。
しかし基調なんら不変。

果たして今度も同じコースならんか。

大阪穀取市場管理委員長・脇田佐一氏、
もの言いたき事、山ほどありと聞く。
彼も腹立たしく激昂せんる問題
多からんと察す。

●編集部注
春雷に準えたこの当時の相場だが、
それは後から見ると、
嵐の前触れに過ぎなかった。

三月は獅子のように始まり、
羊のように去る
といわれる。
相場だけでなく世界も荒れた。
米軍がベトナムから撤退したのも
この年の三月だった。

【昭和四八年三月五日小豆八月限大阪一万四五二〇円・七〇〇円安/東京一万四三八〇円・六九〇円安】