昭和の風林史(昭和四八年一月十七日掲載分) (2015.01.16)
安心買い人気 反動きつからん
一応一万二千二百円という見方が支配しだしたが、
小豆相場は、かなりいいいところに来ている。
「松過の又も光陰矢の如く 虚子」
毎日一個ずつ金の卵を生む〝がちょう〟がいた
―というイソップ物語がある。
飼主は、毎日一個ずつでは物足りなくなり、
きっと、この〝がちょう〟の体内に
金の塊りが一杯詰まっていると考え、
腹を割いてしまった。
なかには、なにもなかった―という話。
相場は過熱してくると加速度がつく。
熱狂が理性を失わしめ、
市場は本来の姿から大きく逸脱してしまう。
市場管理がよほどうまくいかないと、
対策が後手後手となり、
ついには社会におよぼす影響も大きくなり、
取引所無用論にまで発展する。
商品業界は、本年が大飛躍、発展の年だ
―と大きな期待に胸をふくらませている。
しかし現実には新年早々第二週目にして
繊維関係の相場は、きつい規制にしばられた。
尨大な投機資金が、狭い市場にドッと流入してくれば、
市場の機能は破壊され弊害のみがクローズアップされる。
取引所の時代に即応した適切な市場管理と、
取引員個々の自覚が望ましいのである。
小豆相場は
売り方主力と買い方主力が市場でスパークしている。
需給を主に相場を考えるか、
物価という面を主に小豆を考えるか、
それは主観の相違であろうが、
市場で言われているように、
もし売り主力、買い主力のどちらかが
感情的になっているとしたら、
取引所機構を私物化している
―と非難攻撃されても仕方がない。
思惑は、あくまで自由であるが、
それが高じて商品取引所法で禁じられている行為に
抵触するが如き事があっては
大きな悔いを残すことになる。
相場は常に正正堂堂の戦いであらねばならない。
さて、小豆先限一万二千二百円あたり、
そのへんまではケイ線的にも付けられる値段だ
―という一般の見方になっている。
すでに五月限などは大台三ツ変わりの相場で、
先限引き継ぎ線は大台を三ツ変えている。
そして安値から三割高地点である。
現物も産地から急激に移動している。
買い方は、どこの地点まで攻め込むのか判らないが、
買えば儲かるという安心の気持ちが
市場に充満しているだけにこの反動は、
きっときついものになるだろう。
●編集部注
上下を問わず大相場の時はいつもそうだった。
上げ相場の時は売り方、
下げ相場の時は買い方が夢見る局面が出る。
その夢追い人の思いをこめし仕掛け玉が、
次の相場を動かすジェット燃料になるとも知らず。
【昭和四八年一月十六日小豆六月限大阪一万一六五〇円・一五〇円高/東京一万一七〇〇円・二〇〇円高】