昭和の風林史 (昭和四七年十二月二十五日掲載分) (2015.01.05)
先限八千五百円 以下には抵抗が
小豆の先限八千五百円以下は売り叩くわけにいくまい。
急反発すればまた売られるだろう。
「萬灯や終ひ天神にぎやかに 活刀」
年内秒読みにはいった。
正確な時計さえ持っておけば発車まで、
あと二分とギリギリでも切符を買って、ゆっくり新幹線に乗れる。
十五分もあれば東京駅の地下で麦酒を一本飲んで、
走らないで発車に間に合う。
発車のベルが鳴り出してドアが閉まるまでに60秒ある。
60秒という時間は長い時間である。
今年も実によく新幹線に乗った。
勘定してみたらこの一年で百回利用した計算になる。
三日に一度新幹線列車にゆられているわけで
時々自分で自分に〝お前は馬鹿か〟と言いきかせる。
新幹線が岡山まで延長されて困るのは、
大阪を寝すごして、気がついたら新神戸だったりする事だ。
以前なら終点ですよ―と車掌が起こしてくれた。
今年はもうどこにも行かないでよい。
ほっとする。
新年号32頁建ても刷り終わって発送配達にまわる。
そして小豆相場も大阪二月限はストップ安だ。
これもやれやれである。
読者に借りを返したようで、肩の荷がおりる。
あとは
幾つかの忘年会のスケジュールを消化するのに専念すればよい。
そして相場のほうは今週月火水曜とやって
木曜日は大納会。
強弱は、もういいのではないかと思ったりもする。
しかし、この小豆、どう見ればよいか。
先限の八千五百円以下には叩けないように思う。
週明けは反発だろうが、
一月に御祝儀で買われても、それは一時的で、
あとジリ安。
だが八千五百円以下を叩けば急反騰の素地をつくりかねない。
利になった売り玉は手仕舞って、
お正月は、さっぱりと相場のことを忘れてしまう。
手亡の相場は、
今まで穀物を敬遠していた大手専業取引員が
①証拠金が手ごろ②減収だった③他商品がかなり水準を高めた―
ということから先々月あたりから積極的に営業の対象とし、
土曜も富士商品が東穀前場一節で千枚買いの手口が目についた。
恐らく新春は、このような大手専業筋が
ひと場で二千枚、三千枚という商いをするであろう。
伴って相場の動きも一段と妙味あるものになる。
世の中は変わりつつある。
●編集部注
熱気のある業界っていいなぁ…と思う。
新幹線に年百回乗った話より驚くのは
「新年号32頁建て」の方。
書く側も、読む側も、今よりもっと楽しかった事だろう。
【昭和四七年十二月二三日小豆五月限大阪九〇三〇円・四三〇円安/東京八九一〇円・五九〇円安】