昭和の風林史 (昭和四七年九月二十一日掲載分) (2014.09.24)
人気化の傾向 線型は買い示す
手亡相場がものになりそうな格好だ。
期先限月の七千円台乗せとなれば
久しぶりで活気が出よう。
「今宵また人待心ちちろ虫 はん」
毛糸の天井を見つけてやろう、
あるいは大天井したら思い切り売ってやろう―
人それぞれ大きな思惑を胸に秘めている。
穀物市場から、
現在最も激しい投機の場になっている毛糸、生糸相場に
スペキュレーターは馳せ参じたが一様に、
小豆相場の一万四千円近い大下げを見てきているだけに、
買いのバスに乗り遅れた人は
下りの超特急列車を待っているようだ。
しかし生糸にしても大相場である。
押し目が大きいほど次の騰げがきつくなる。
結局大勢的には九千円台のものであろう。
毛糸にしても相場基調はこの突っ込んだところは
買っておいて楽しみが残りそうだ。
あまり急ピッチの騰げかただけに、
ついていけない人も多かった。
しかし毛糸相場の環境は上向きである。
小豆の下げでやられたから、
江戸の敵(かたき)を長崎で…と、
毛糸や生糸を変な邪念で売ろうものなら
泣き面(つら)に蜂、手ひどい目にあうだろう。
手亡の相場がもの言いたげである。
線型は、ここで一本伸びきると、
綺麗な買い線になる。
商い高も小豆を上回っているし、
取り組みも一時に比較すると、かなり太ってきた。
難を言えば活発な手口がまだ見られないが、
新穀が七千円に突っかけてくれば
久しぶりに湧く場面も充分期待できる。
結局は小豆より高い相場になるのかもしれない。
今の小豆は、ここから売っても取れると言いきる人が多い。
国鉄の貨車繰りよくなり、出盛り期にはいれば、
七千円ベタベタの相場だって、あり得ないとは言えない小豆だ。
余りものに値なしいう言葉がある。
輸入小豆の投げ売り。そして秋の交易会。
台湾からも売り物が来ている。
今さらながら、小豆相場は大変な時代になったものだ。
手亡のほうは収穫五十三万俵。
ピービーンズの供用格差拡大、
仕手的要素の強い建て玉と手口、底打ち観の台頭―。
なんだか相場になりそうな感じがする。
期近限月が六千円台に乗せ、
期先限月が七千円台に乗ってくると、
それだけでも生糸、毛糸市場から
投機資金が幾らか戻ってくるだろう。
●編集部注
相場記事に糸が出てくる所に時代を感じる。
当節かんけんと入力し、
官権や漢検が出て来る事はあっても
「乾繭」と一発変換される事はない。
毛糸、生糸、スフ糸、綿糸20番手、40番手…。
昔は前橋に乾繭市場が、横浜に生糸市場があった。
仇討の舞台は長崎以外にも沢山あったのだ。
もっとも、長崎に商品取引所はなかったのだが…。
【昭和四七年九月二十日小豆二月限大阪七九五〇円・一四〇円高/東京七九七〇円・一五〇円高】