証券ビュー

森羅万象

昭和の風林史 (昭和四七年七月二十八日掲載分) (2014.07.30)

意地も人情も 相場にゃ勝てぬ

敗け犬を、どつきまわしている売り方。
これが相場というもの。
買い方に声なし。黙して語らず。

「業苦呼起す未明の風鈴は 波郷」

納会を見て、市場は暗澹たる気持ちにおちいった。

受けたのが売り方である。
腰のある受け手がいなかった。
底抜けの格好だ。

27日は、かなり受けものが見られた。
そして東京は九、十月限がついに八千円台に陥没である。

惨憺たるものだ。

売り方は勢いに乗った。

利食いする買い戻ししか買い物はない。

一万円割れからの、値ごろ観による買い玉は全滅した。
刀折れ、そして矢尽き、
無気力になった買い方を、どつきまわす。

北海道は低温気味であるが、
目下のところ取り組み関係が先行する市場になっているから、
産地の低温に耳をかさない。
敗け戦さとはそういうものである。

水に落ちた犬は石を叩きつけろ―という(毛語録)。
敗け犬・買い方を八千円台に叩き込め、
そういう相場になっている。厳しい。

買い方は、投げて投げて投げる。
無残かな。声もない。
戦い利あらずは、逃げて逃げて、逃げる。
勝敗は時の運。

気やすめは、もういいのである。
渋り腹は、どか糞の前触れ。
ジリジリチクチクしていた(小石崩れ)線型が、
納会(26日)からドカドカときた。
止まれば底と見たのは甘かった。
いや、悪いけれど、止まってくれるかもしれないと、
はかない期待をかけたのである。ど
なたさまも考えることは同じである。

これで、取り組みが、どの程度改善されるか。
それと、値段がどこで落ち着くか。
産地の天候が、この先どう推移するか。

強気している筋は強弱なしである。
昔〝よういわんわ〟という言葉がはやった。
あれである。言う事なし。
つまり曲がり屋である。黙して語らずという。

歌の文句にある。

夜が冷い、心が寒い、
渡り鳥かよ俺等の旅は、
風のまにまに吹きさらし。

亭主もつなら、堅気をおもち、
とかくやくざは、苦労の種よ、
恋も人情も旅の空―。

月末から新ポ、舞台は、
どのように変わってくるだろうか。
怨みますまいこの世の事は、
仕掛け花火に似た命という。
もえて散る間に舞台が変わる、
まして相場は、なおさらに。
意地も人情も浮世にゃ勝てぬ、
みんなはかない水のあわ、
泣いちゃならぬといいつつ泣いて、
月にくずれる影法師。

●編集部註
冒頭で〝どつきまわし〟
という表現を見てしまうと、
後半の哀歌と
正司敏江・玲児のどつき漫才が重なってしまう不思議。

【昭和四七年七月二七日小豆十二月限大阪九五五〇円・一一〇円安/東京九五七〇円・一四〇円安】