証券ビュー

森羅万象

昭和の風林史 (昭和四七年五月九日掲載分) (2014.05.26)

逃げ場づくり 因果玉が鈴なり

目に見えて相場の内容が悪くなっているのだが

大衆筋は値ごろで買い、さらに重くしている。

「山水に夏めく蕗の広葉かげ 蛇笏」

交易会での、その後の成り行きと、

東穀における台湾小豆の大量クレーム申請、

それに、きょうの全穀連会議で

輸入小豆の格差を、もっと拡大しようとする動きなどが

材料といえば言える。

一方、四月の消費地在庫三十四万八千俵。

四月入荷予定の分が入船遅れになり、五月入荷。

この数字も、ひねりかたによれば強弱の材料になる。

そして北海道の天候と作付け。

東京市場も、大阪市場も、総じて言えることは

①大衆の値ごろ観による買い気が強い

②クロウト筋は高値の買い玉を逃げたがっている

③現物手持ち筋は不需要期と梅雨期を控えて、

つなぎ場を求めている

④値を吊り上げたり煽(あお)ったりして買い方は

逃げ場づくりに懸命である。

とにかく供給の途切れるところがないのだから

買い方に希望がない。

昨年は市場の維持と解け合いを心配した。

今年は安値に低迷して

相場が沈潜することを心配しなければならない。

変われば変わるものである。

これで、交易会の追加成約だとか、

案外七、八千㌧の契約になっていたとか、

作付けが大幅に増反だったとか、

なにかキッカケがあれば

千円幅ぐらい棒で落としてしまう相場だ。

その時は、高値の因果玉を投げてこようから、

七百枚買えるとか八百枚買えるという、

ヤリ物ばかりの場になるだろう。

もとより全限万円割れで、

特に期近限月など九千円割れ

という寒気(さむけ)のする場面もあるだろう。

そうでなくとも納会が接近すれば梅雨・不需要期を前にして

受け手は極度に細くなる。

先高期待があればこそ仮需要の受け手も出るのである。
コロンビア小豆も輸入する。

春の交易会の契約分も入荷する。

買い方は、北海道の天候に期待をかけるわけだが、

これは豊凶五分と五分。

取り組み面では

三晶が踏んでくるだろうという期待もあるようだが、

中国に輸出余力がある以上、

北京商談で買うことも出来よう。

相場の実勢は、全く悪いのである。

さらにいえば、大衆の値ごろ観による買い気、

これがこの相場をいよいよ重いものにしている。

売り方針は不変である。

●編集部注
陰の極み、陽の極みはもう少し先の話。

両陣営ともまだ余裕がある。

【昭和四七年五月八日小豆十月限大阪三二〇円高/東京五八〇円高】