昭和の風林史 (昭和四七年四月十七日掲載分) (2014.05.12)
茫茫漠漠たり S安必至の段階
チンタラ峠の相場はチンタラ、チンタラと下げていく。
全限万円割れに突入しよう。
「一弁のはらりと解けし辛夷かな 風生」
週末は、まさしく、
はらりと解けし辛夷(こぶし)かなの風情だった。
先限は新安値引け。ケイ線でいうと非常に悪い姿である。
交易会がはじまって、
今週にも、かなり契約が進みそうだという空気。
それで今週ストップ安でもあれば―
という片寄った人気である。
大阪阿波座は、引かされながらも強気を唱え、
ストップ安なら絶好の買い場だという。
あるいはそうかもしれない。
しかし、それは新規買いではなく、
売り玉の利食い場という意味に受け取ればよい。
もちろん、全限の万円割れから、自立的な反動高はあるだろうが、
利食いしたあとの戻しは、再び決定的な売り場になるのだ。
見ていると、大きな売り物が出るけれど、
値ごろ観の買い物が、ひきもきらない。
セールスの営業テクニックとしては、
お客さんに売りをすすめるよりは、
半値になった相場で、天候相場も近い。
千円ぐらい引かされるつもりで買い下がれば―という。
相場の表面現象の説明で、買いをすすめるほうが
注文も出やすい。
本当は、ここから売るのが相場なのであるけれど、
クロウトでさえも売りにくい値段である。
だから売らなければならないと言っても、それでは
注文が出ない。
わらわらと、わらでも掴むように買うのを見ていると、
この相場は根が深いと思うのであった。
聞けば北京商談分の入船があいついで
四月の在庫は、さらに増加しそうだというではないか。
四月末三十五万俵ないし三十七万俵在庫となれば、
まさしく出盛り最盛期の観である。
そして交易会で出来、あとまた北京商談。
そして台湾大増産。
コロンビア産の入荷と続けば
北海道の天候が、仮に悪くても、どうということはないし、
東北六県の肥後熊本も大増産となれば、
九千円台が底値などといってはおれない。
さらに北海道が平年作、あるいは豊作ときたら、
チンタラ、チンタラ値が消えていくのみである。
値ごろ観など通用するご時世ではない。
男子志を立てれば値のあるうちに投げよ。
そして海中に飛び込む思いで売れ。
戻れば盛(もり)のよさをよろこび、また売るのだ。
●編集部注
ここまで売りと書かれると小気味がいい。
この当時、この文を朝に読んで
「おのれ風林火山め」
と悪態をつく、買い推奨の外務員さんの姿が目に浮かぶようだ。
またこういう時の分析ほど良く当る。
そうなると益々憎らしくなる。
【昭和四七年四月十五日小豆九月限大阪一六〇円安/東京二一〇円安】