昭和の風林史 (昭和四七年二月二一日掲載分) (2014.03.14)
惨落待つのみ S安含みの場合
買い方仕手はミシミシと俵の重みを感じている。
そしてまた新たな俵が上積みされるのだ。
「山焼の明りに下る夜舟かな 一茶」
土曜の朝商社筋に続々と中国小豆の契約電報がはいっていた。
条件は天津トンあたりFOB一七八ポンド。
山東一七六ポンド。いずれも3~4月積み。
これは旧正月前の契約条件とおなじで、
中国は各社のビッドには全量受けの態度だという。
従って成約量は相当量になりそう。
観測筋では旧正月前の分と、正月空けての分とで
一万㌧弱の契約になるだろうと見ている。
また、中国側の小豆の売り腰を見ていると、
売れ残りの品を処分しているという感じを受けないそうで、
東北小豆が控えていることもあり春の交易会でも、
意外な数量が日本側のの出方によっては契約されるだろう。
この日(週末)、小豆相場は薄商いの大阪市場で
西田の手が踏んでいた。
この店の売りは有力な三、四の顧客筋によるものだ。
以前だと、西田の店の売りは
三、四百名の顧客(一人当たり小額枚数)であったが
昨今は、そうでないようだ。
さて、産地相場も力を失っている。
強引に持って行こうとするけれど、
相場そのものは、やはり空虚さを隠しきれない。
消費地市場も前週金曜と土曜と
二本の陽線で逆襲してみたが、やはり基調は下降期にあり、
相場が明らかに疲労しているということを感じる。
一般的には輸入採算値一万五千五百円以下は、
抵抗があるという見方をしているが、
実勢(供給にゆとりが出来る)が
緩和してくれば輸入採算値など
無視して値崩れするのが先物取り引きである。
しかも買い方仕手は
十二万俵の重味をひしひしと感じる時分で、
ミシミシという音が聞こえる。
一日持てば一日倉敷料が重くなる。
目に見えない経費(金利など)。
それこそ知らぬ間に千丁替えぐらい引かされてしまうのである。
この仕手は勝てない。
そして相場は一万四千円割れに落ち込むことであろう。
ただ、一般は、うかつに売ると、ひねりあげをくらうため、
それを警戒しているだけで、
崩れが見えたら、すかさず総売りとなるだろう。
●編集部注
〝崩れが見えたら、すかさず総売り〟とは、
チャートパターンにおける「小石崩れ」の事を指す。
文中に登場する〝西田〟とあるのは
西田三郎商店の事であろう。
北浜にレンガ作りの瀟洒な店舗があった事を記憶している。
今もあるのであろうか。
商品先物取引は、大半が納会までに差金決済されるので、
倉荷証券を巡るやり取りである事を知る人は意外に少ない。
貴金属は腐らぬが、穀物はそうは行かぬ。
倉荷証券の重みがちと違う。
【昭和四七年二月十九日小豆七月限大阪二〇円高/東京五〇円安】