昭和の風林史 (昭和四六年十月二十一日掲載分) (2013.11.11)
買い陣営粛然 高値玉 野ざらし
手亡はジリ貧である長い灰色の線だ。
時間をかけて値が消えていく。小豆は、どこかで反撃あり。
「炭焼に渋柿たのむ便かな 玄虎」
小豆のケイ線は一万七千七百円~八千三百円。
この圏内にはいる格好で、買い方は
一万八千七、八百円を死守することが出来なかったため、
押し切られそう。
ケイ線を〝つくる〟なら、
なんとしてでも急所の一万八千八百円を支えなければならなかった。
ケイ線筋は線型悪を見て、にわかに弱くなり、
これが各地にばっこすれば二枚、三枚の玉とはいえ、
数が多くなるから、強力なゲリラの集団となる。
それでこの戦況を、どうかと判断すれば
売り方は中共(小豆)軍の新鋭新穀師団の
上陸という援軍を得て、
悪くすると買い方は瞬間的とはいえ
一万六千円台にまで追い詰められる可能性さえある。
それは、まるでダンケルクへ追い詰められた連合軍であり、
釜山橋頭堡まで追われたマッカーサー元帥の悲惨な情景でさえある。
しかし、買い方も、どこかで総反撃に転じるのであろう。
それはノルマンディ作戦であり、仁川上陸である。
今は、生糸戦線に、乾繭市場に、手亡戦線に
兵は分散し、いずれも悪戦苦闘の小豆買い方である。
筆者は、この相場は長引くと思う。
ここで仮りに一万八千円を割り、
七千円ライン危うしという買い方断末魔の危機に直面し、
陣雲暗し五丈原、丞相病あつかりき―で、
抜け駈け裏切りが続出しようと、
はたまた中共小豆の大量契約があろうと、
筆者は信じる。
相場自然の流れ十月底入れ。
十一月→十二月反騰。一月天井のコースを。
もとより流動的な交易会の商談であってみれば
価格が高すぎたり、予期に反して数量がまとまらなければ、
一万八千五百円、買い方最後の力をふりしぼり死守しよう。
総反撃の兵力も結集し、散乱した陣営も
立て直すことであろうから失地回復の千円、千五百円高は、
なんの朝飯前、暁の逆襲である。
思えば年間百万俵足らずの小豆である。
烏合の勢いにあらずとも味方に正しき道理あり―という歌もある。
風にひらめく連隊旗、しるしは昇る朝日子よ、
破るるほどに誉れなれ―。
買うもよし。石を抱いて辛抱するもよし。
追証よし。ぶん投げるもよし。ドテン売りまたよし。
人々はそれぞれ一本、一本記入されていく線を眺めて
自分で判断し、決意する。
●編集部注
どうすれば相場で大儲け出来るのか。
私の問いにある相場師はこう答えた。
「100人中、99人が見ている方向の、その逆に相場を張る事ですよ」。
【昭和四六年十月二十日小豆三月限大阪一万八五三〇円・三〇円安/東京一万八五一〇円・九〇円安】