証券ビュー

森羅万象

昭和の風林史 (昭和四六年十月十三日掲載分) (2013.10.31)

逃げ場を探す 無理無理買い買い方

相場は末期症状である

買い方が煽るところは軽く売っていく。

噴き値売りでよい。手亡も駄目だ。

「山裾のありなしの日や吾亦紅 蛇笏」

北海道食糧事務所が

小豆の出回り三十五万四千俵と

非常に少ない数字を出したことから、

朝ストップ安に叩かれた相場が大引け急騰して

月曜日は一日で千円幅も動いた勘定。

たしかに収穫量は悪いだろうし、

農林省の九月一日現在六十一万俵予想から

落葉病などで四十万俵を割っているかもしれないと思う。

だが、相場は別である。

二万一千円が、このままで二万三千円、五千円と行くものではない。

買い大手は交易会までに利を納めておきたいところであるが、

売りに行けば安い。

結局、だから値を吊り上げてみたり煽ってみたりするわけだが、

余分な高値の玉がふえるだけだ。

見ていると今の小豆は、まるでサイコロをふっているみたいで、

丁の目が出るか、半の目が出るかの各節だから、

心あるものは近寄らない。相場もこうなると末期症状である。

値ごろ水準が高いだけに交易会での商談は、

あるいは予想以上に進展するやもしれず、

韓国小豆や台湾小豆の入荷も相つぐ。

それで品物が余るというわけにはいくまいが、

相場というもの天まで伸びるものでなく、

天井すればどんなに買い方が頑張ろうとも

ひとりでに値崩れするのである。

まだ余勢を残しているから

二万一千円どころまで煽りが利くかもしれないが、

買い玉を逃げたい陽動策であるから、

そういうところを売り狙えばよい。

この相場の先は見えたような気がする。

値ごろ観にとらわれるのは、いけないが、

二万円相場がいつまでも続くわけはない。

また相場そのものが非常に疲労している。

完全な老境である。
噴き値を売っていけばよいと思う。

手亡のほうだが、もうしなにかのキッカケで

九千円近いところまがあれば成り行き売りが判りやすい。

手亡の高値には因果玉が相当残っている。

八千四、五百円は居心地のよい水準だろう。

八千円割れは消極的に強気してもよいが、

総体に手亡に関しては気乗りしていないようだから、

のんびりやらないと、つまらんことになるだろう。

●編集部注
そういえば、大阪の事務所にはいつも音楽が流れていた。

四十年前は、どうだったのだろうか。

ここではワーグナーが相応しい。

ニーベルングの指輪』が良いか。

最終夜「神々の黄昏」の終幕

ヒロインのブリ ュンヒルデは、

黄金の指輪を手に、炎の中に飛び込んでいく…。

【昭和四六年十月十二日小豆三月限大阪二万〇一七〇円・七〇〇円安/東京二万円・六一〇円安】