昭和の風林史 (昭和四六年八月十七日掲載分) (2013.09.03)
突っ込み売るな 戻りを狙うのだ
そういうのは利食いする。
反発したり戻ったところを売るのがよい。
「つくつく法師いつでもどこでも遠き声 種茅」
相場の定跡(石)の本なら〝崩れ〟型で、
ここから売っていくところと書いてあるだろう。
ところが昨今の相場は定跡の本のようにはいかない。
先二本、一万四千七百円あたりは止まるだろうと
巧者筋は見ている。
買い方主力も、一万四千七、八百円は
絶好の買い場になると見ている。
前二本(八、九月限)、これは相場ではない。
強弱の対象にもならない。
それで新穀限月だが、
これからどういう方針でいくべきか。
売ってよしの相場だし、
買ってよしの相場のようにも思える。
戻ったところを売るのも判りやすいし、
突っ込んだところを買うのもよい。
市場には、常にカンカンの強気と、
カンカンの弱気とが存在する。
それはその人の性格からくるものであるから、
他人がとやかく言う筋合いではない。
さて、すべての材料は、およそ市場で言い尽くされている。
その限りでは言うことなしである。
下げるもよし。戻すもよし。
どちらでもよい。それは目先である。
大勢は一万四千円割れのコースであろう。
もちろんこれからの天候と作柄にもよろうが、
相場そのものは〝買い疲れ病〟で
①買い方が意識的に人為的買い煽りをすれば、
よけい後が悪くなる。
無理したとがめは大きい
②さりとて買い方がジリジリ敗勢をたどり、
それを防戦つとめれば、
兵力の逐次投入で戦術上、最も下策とされる。
現在、五千五百円から六千円台にかけて、
買い方の買い玉が、うめいている。
すべては引かされ、これからの百円安、二百円安は
追証々々でさいなまれる。
作柄のほうは、かなり直っているという空気が
市場を支配している。
20日発表の作付け面積は、早耳情報として
五万一千五百ヘクタール前後だろうという。
東北六県の内地小豆も直っている。
十月には相当量が渡ってくる。
よし、戻したところは売ってやれ。
ただし、突っ込んだところを
売ってはいけませんよ。
買い方には力がない。
自由化を控えて、予備軍も必要だ。
自由化発表で安いところを、
もう一発買うための予備軍だ。
一日過ぎれば一日それだけ新穀の出回りが近くなる。
時は金なりとはこの事であろう。
年内収穫の三割ないし四割の出回り。
それをも買い支えるだけの力が、あるだろうか。
年間の需給といったところで、来年は来年のこと。
年三回収穫できる台湾小豆も入荷する。
戻りを売っておけばよいのである。
戻りがあるか。戻り待ちに戻りなしとも言う。
少しぐらいの反発はあるだろう。それを売る。
●編集部注
上り坂、下り坂、魔坂と、
相場にはいくつもの坂が存在する。
一九七一年(昭和四六年)現地時間八月十五日の日曜日、
ニクソン米大統領は金と米ドルとの交換停止を発表。
所謂「ニクソンショック」である。
十六日の日経平均株価の寄りは二七四五円。
引けは二五三〇円。
翌週、二三日の安値は二一三三円。
一週間で22%下落。
半年かけた上げ幅が、
この一週間で全て消える。
【昭和四六年八月十六日小豆一月限大阪七〇円安/東京三〇円安】