昭和の風林史 (昭和四六年八月五日掲載分) (2013.08.20)
急所の売り場
買い方総攻撃を
売り方に信念がある。
この相場必ず大崩れする。
七分作が怖くて定期が売れるかいというところ。
「二三日採らねば胡瓜遠目にも 黄枝」
作柄が悪いことぐらい百も承知で売り方は相場を弱気している。
買い方にすれば無いもの売る奴が悪いと言うだろうが、
先物相場で、この論法は通用しない。
無いものが売れるのが定期市場の特色である。
その論法で言うなら買い方だって
現物欲しくて買っているわけじゃない。
要は値ザヤが欲しいだけで、
現物受けたり缶詰めにしたりするのは、
単にその道中におけるテクニックである。
しょせんは値ザヤ狙いで、
いうなら無いもの売るのも相場屋なら、
買い方だって単なる相場屋に過ぎん。
七分作や台風が怖くて小豆が売れるかい―
というのが今の売り方である。
相場屋には相場屋の考え方がある。
スペキュレーター(投機師)とはそういうものだ。
売り方にだって充分産地の畠の遅れていることぐらい
情報を掴んでいる。
弱気する側にすれば、およそ次のようにこの相場を見ている。
①先三本の六千円乗せは絶好の売り場になる。
②なお高ければ売り上がる方針。
③中共小豆が現実に入荷して市中を圧迫する。
④作柄悪、すなわち七分作は買いきった相場だ。
⑤高値に買い方の玉が大量にモタれている。
⑥買い方は現物まで抱いて戦線がひろがりすぎている。
定期の勝負は定期で解決するのが本筋であるが
現物まで操作しなければならないことは、
それだけ敗色が濃いからだ。
⑦高水準のため消費不振は、やむを得ない。
⑧人気の離散(前三本)している相場は仕手のひとり相撲である。
⑨買い方だって高値では逃げたい腹である。
しかも日柄を経過し規制は強化するし、
相場は無理を重ねている。
産地天候も回復気味で
台風接近という心配材料があるにはあるが、
それをひっかけて買い煽っても
単なる一発花火高にすぎない。
中共の夏作物の大豊作。
雑豆の自由化という材料もあるし、
売り方大手にしても腹を据えた勝負だけに、
そう簡単には言うことをきくまい。
この相場は必ず大崩れするという信念を持つものだ。
●編集部注
来週20日号掲載の原稿を読みながら、
筆者はこの文章を書いている。
近藤雅世さんのコモアイレポートも
お盆休みに入るので、
代わりにNLP(神経言語プログラミング)心理学を
相場手法に取り入れた事で知られるエクセレントホースの村居さんに
執筆を依頼。その原稿が届いたのだ。
テーマは「潜在意識によって引き起こされる売買の悪癖」について。
信念は、時として諸刃の剣と化す―。
村居さんは、常日頃からセミナー等で訴えておられる。
【昭和四六年八月四日小豆一月限大阪三九〇円高/東京四六〇円高】